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「父が“反韓系YouTuber”にハマった」 息子の苦悩と打開策(1/2 ページ)

» 2021年04月27日 08時00分 公開

 「父が“反韓系YouTuber”にハマった」──筆者がこの事実を認識したのは、2019年の夏ごろだった。それまで尊敬できる人間と思っていた父が、正確かも分からない情報を基に、偏った思想を唱える動画を見ているのがショックだった。

 父は50代で、もともとサラリーマンだった。しかし19年の春ごろに転職。現在はフリーランスとして働いている。

 父は転職前、そこまでYouTubeなどの動画サイトを見る方ではなく、むしろDIYや釣り、音楽といった趣味を楽しんでいるタイプだった。とはいえテクノロジーに弱いわけではなく、仕事ではスマートフォンやPCを使いこなしていた。

 筆者に「Photoshop」の使い方を教えてくれたり、「Spotify」でおすすめのプレイリストをシェアしてくれたりすることもあった。

 そんな父が、なぜ偏った思想にのめり込んでしまったのか、そしてそこから、息子である筆者が父にどう働きかけたのかを紹介していく。

転職を機にYouTubeを見る機会が増えた父

 転職を境に、父は家で仕事をすることが多くなり、通勤しなくなったことで生まれた空き時間で釣りやDIYの動画を見るようになった。ちょうどこの頃にYouTubeや「Amazon Prime Video」を視聴できるテレビを購入したこともあり、動画を見る頻度も増えた。

 筆者は当時学生で、ちょうどこの時期から就活が本格化し、父とコミュニケーションを取る機会が減っていた。母も外で働いており、以前より父との会話が少なくなっていた。

 就活が落ち着き、内定を得た夏ごろ、筆者は初めて父が反韓系YouTuberの動画を見ていることに気づいた。筆者が大学の課題を終えてリビングに入ると、父がテレビで反韓系YouTuberの動画を見ていた。

 もともと、父は特定の政治思想を持つ人ではなかった。しかしこの時期から、父は少しずつこういった思想に影響されていった。ニュースを見て過激なことを言うようになったり、反韓系YouTuberの動画を見る時間が長くなったりした。

 とはいえ、筆者は父に直接「そういった動画を見るのはやめてくれ」と言えなかった。コミュニケーションが減っていたこともあり、父の娯楽を奪うことは、転職で環境の変わった彼にとってもストレスになるのではないかと考えていた。かといって代案があるわけでもなく、具体的な行動を起こせずにいた。

就職を機に一人暮らし 距離を取ったら見えてきたもの

 そんな状況のまま時は流れ、20年4月、筆者は就職して社会人になった。給料が出るようになり、初任給と貯金を合わせれば、引っ越しして一人暮らしを始められるようになった。

 そこで筆者は一人暮らしを始め、父と距離を取ろうと考えた。一人で生活すれば父への嫌悪感が和らぐのではないかと思ったことが一番の理由だった。

 そして5月、筆者は神奈川の実家から東京に引っ越し、2021年4月現在まで一人暮らしを続けている。引っ越してすぐは月に1回ほど実家に帰っていたが、それ以外ではあまり連絡を取っていなかった。

 しかし引っ越しからしばらくたつと、距離を取って冷静になったのか、父について考えることが多くなった。同時に「あの時、ああすれば良かったのではないか」と思うことも増えた。そこで、その時のアイデアを基に、父の状況を改善するため、2つの作戦を実行してみた。

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