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ビットコイン本位制——ビットバンク廣末CEOが描く仮想通貨の未来(1/2 ページ)

» 2021年04月28日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 ビットバンクの創業者である廣末紀之CEOは、1991年に野村證券に入社し、その後99年からGMOインターネットで常務取締役を経て、2014年に仮想通貨取引所のビットバンクを創業したという経歴を持つ。また日本暗号資産ビジネス協会の会長も務める。

 証券からIT、そして初期からの仮想通貨(暗号資産)を見てきた廣末氏は、現在の仮想通貨を巡る状況をどのように分析しているのか。

ビットバンクの創業者である廣末紀之CEO(ビットバンク提供)

仮想通貨交換所は「ISP」である

——仮想通貨の価格が上昇しています。機関投資家や企業もビットコインに投資するなど、米国では世間の認知が変わってきました。そして、仮想通貨取引所のコインベースが、7兆円超という、三菱UFJを超える時価総額で上場したことが話題です。

廣末氏 野村證券に入社した後にIT業界に行き、IT業界の変遷を見てきた。今の仮想通貨取引所は、IT業界でいうISP(インターネットサービス・プロバイダー)だという話をよくしている。これは、その業界に入るゲートウェイの役割なので、とても重要だ。

 米コインベースは、92年に上場したISPである米AOLに近い。AOLが上場してからインターネットの業界は活況になったが、その次には、より便利にインターネットを使えるブラウザが出てきた。仮想通貨業界はまだその段階にも行っていない。

 では、ISPの勃興、ブラウザの登場のあと、何が起こったかというと、アマゾン、グーグルが出てきた。仮想通貨も広がったあとには、インターネットと同じように次のビジネスが出てくる。

 取引所のビジネスは規制される業界なので差別化が難しく、最終的に手数料が差別化の方法になると、いずれもうからなくなる。グーグルやアマゾンになるために何をやるかが、これからのテーマだ。技術の進展、規制の進展、社会のアクセプタンス(受容)があって、新しいサービスが生まれてくるだろう。

高騰するNFT価格には懐疑的。IoTなどソフトウェア間決済に注目

——仮想通貨を使ったサービスとしては、20年にDeFiが流行し、21年に入ってNFTが急速な盛り上がりを見せています。

廣末氏 高騰するNFTの価格には懐疑的だ。NFTは以前からあるもので、今着目される理由はない。価格の正当化は困難で、バブルの要素が強い。技術的な優位性は感じない。マネーロンダリングのリスクがあるので、FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)でも、明記はしなくても明らかにスコープに入れている。ただし、NFTで所有者の一意性が保証されるなどのユースケースもあるだろう。

 仮想通貨は人が使うように想定されているが、実は人が使うには使いにくい。一番のユースケースは、ソフトウェアが使うお金としてすごく優れている点にある。AIが発展して、自ら判断できるようになると、AI自体がお金のやりとりや経済活動をやるようになる。そのときに使われるお金はこれしかない。

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