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ホンダの「世界初」にこだわる呪縛 自動運転レベル3に見る、日本の立ち位置高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2021年04月12日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 以前から予告されていた、レベル3の自動運転機能を搭載したホンダ・レジェンドが、いよいよ3月に発売となった。しかし発売を心待ちにしていた高級車好きにとっては、少々期待外れの内容だったかもしれない。というのもレベル3の自動運転が極めて限定的であり、なおかつ販売も極めて限定的だからだ。

 レベル3の自動運転は、一定の条件のもとで、運転者がハンドルから手を離すなどして、システムに運転を任せられるものだ。しかしレジェンドの自動運転が機能するのは高速道路上で、なおかつ時速50キロ以下の渋滞時に限られる。しかも価格は従来のレジェンドの1.5倍となり、リース販売に限られる上に、100台の限定販売だ。

 一般道は歩行者や自転車、その他道路上にはさまざまな障害物が存在するのに対し、高速道路上は交差点もなければ信号もない、非常に限定的な道路という条件だ。しかし今回のレジェンドでは高速道路上でも渋滞時しか対応していない。

 かなり限定的でありながら、ホンダが発売を決めたのには、大きく分けて2つの理由があるように見える。1つはホンダ社内の事情ともいえる。早い話が、相変わらず「世界初」にこだわる呪縛から逃れられていない、というものだ。

 ホンダのモノづくりや製品の年表を見ると、やたらと「世界初」の文字が目に付く。それ自体は技術レベルの高さや独創性を示し素晴らしいが、いつしか「世界初」が目的になってしまい、消えてしまった技術も多い。それは開発リソースを考えると実にもったいないが、それもホンダらしさと諦めるべきなのだろうか。

 そして残る1つの理由は、もっと大きな日本の産業を取り巻く経済全体を見据えた事情、といっていいものだ。

ホンダが1000万通りのシミュレーション、130万キロメートルにも及ぶ実証実験を経て発売した、レジェンド・ハイブリッドEXホンダセンシングエリート
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