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走り過ぎを判定し、休憩を促す膝の角度センサー 神戸大学が開発Innovative Tech

» 2021年04月06日 07時18分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 神戸大学 塚本・寺田研究室の研究チームが開発した「ストレッチセンサを用いた常時膝角度推定によるサポータ型怪我防止システム」(PDFへのリンク)は、膝に装着したウェアラブルデバイスによって、走っている時の膝の角度をリアルタイムに計測するシステムだ。疲労によるランニングフォームの乱れを検出して休息するようユーザーに警告し、膝の故障を未然に防ぐという。

photo システムの概要

 ランニングで一番故障する部位は、着地時に衝撃が大きい膝だといわれている。走る環境が悪く、不適切なフォームでしか走れない場合や、長時間走行による疲労の蓄積でランニングフォームが乱れると、通常より負荷が増え、衝撃吸収が不十分となり、けがにつながる。

 衝撃吸収の指標には、一般に着地時の関節の角度と、ダブルニーアクションという動きが用いられる。ダブルニーアクションとは、ランニングにおいて足が地面に接地し、地面を蹴り上げ、再び足が接地するという1周期の運動間に膝が2回屈曲する動作を指す。本システムでは、ダブルニーアクションの動きをウェアラブルデバイスによって評価する。

photo ダブルニーアクションの動き

 ウェアラブルデバイスは、スポーツ用の膝サポーターに伸縮性があるストレッチセンサーとマイコン、無線モジュールを組み込む。ストレッチセンサーの値からランニング時の膝の屈曲状態を取得し、得られた値に基づき膝の角度を機械学習で推定する。準備運動時に行う屈伸運動でキャリブレーションするため、着脱や体形の変化による誤差を小さくしている。

photo 平たんな道を走った際のダブルニーアクションの値

 これにより計測するダブルニーアクションは、ディスプレイ上でリアルタイムに表示され、自分のフォームを適宜確認しながらランニングが行える。

 取得した膝の屈曲状態と角度推定から走り過ぎと判定された場合は、ランニングフォームの改善や休憩が促される。この判定方法は、走行序盤10歩程度の膝の角度を平均値に、その後の着地時の角度が4度以上大きくなったところで走り過ぎと判定される。

 実験では上り坂や下り坂でもダブルニーアクションが計測でき、平たんな道の走行におけるさまざまな速度での走行でも実用的な精度で膝角度を推定できたという。

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