マーケティングと営業を束ねてカスタマージャーニー全体を見るチームが必要な理由アドビ流データドリブン経営への道【第3回】(1/2 ページ)

アドビが実践するデータドリブン経営について詳しく解説する連載。3回目のテーマは組織体制です。

» 2021年04月05日 09時00分 公開
[西山正一アドビ]

 これまで説明してきたように、アドビのデジタルメディアビジネスでは、「Discover」「Try」「Buy」「Use」「Renew」のステージごとにデータを見ながら打ち手を考えるやり方でビジネスを進めています。

今回は私がリーダーを務めるGTM(Go To Market)チームがマーケティングや営業とどう関わっているかを紹介しましょう。

GTMチームの役割はオーケストラの指揮者

 2017年にできた私たちGTMチームのミッションは、アドビ製品を通じて最高の顧客体験を提供するために、あらゆることを実行することです。売り切りのビジネスモデルではなくなったことで、アドビ製品を使い続けてもらうために必要なことは何かを考え、お客さまとの関係が末長く続くようにDDOM (Data Driven Operating Model)の「Discover」から「Renew」に至る5フェーズを通じて継続的に改善することが重要になりました。

 実は2017年に私がマーケティングから営業に異動する話が持ち上がったとき、当初はEコマースのリーダーを務める予定でした。それが米本社でDDOMという考え方に基づきビジネスを進めることが決まり、関係部門を束ねるGTMチームができるタイミングで、日本でも同様のチームを立ち上げるて私がその業務も兼ねることになりました。つまり、米本社と日本の取り組みはほぼ同時に始まったことになります。

 外資系企業における日本市場の位置付けはAPACの一部とされる場合が多いのですが、アドビの場合は違います。日本は単独リージョンということもあり、当時から一通りの組織機能がそろっていて、人材も充実しています。他の国とは異なり、すぐにDDOMに基づくデータドリブン経営の立ち上げが可能な素地ができていたといえるでしょう。新しく覚えないといけないことは多々ありましたが、幸いなことに私自身はマーケティングと営業の両方を経験していたので、少なくともカスタマージャーニーに関わるさまざまな部門と対話できる前提知識がありました。

 GTMチームの役割は端的に言って「オーケストラの指揮者」のようなものです。指揮者自身は楽器を弾きません。演奏者に該当する人たちはいろいろな組織にいて、「Discover」と「Try」をCampaign Marketingが、「Buy」をSalesが、「Use」をLifecycle MarketingやCustomer Success Managersが、「Renew」をRetentionやCustomer Supportが担います(図1)。マーケティングが2つあるのは、需要を喚起するCampaign Marketingと製品の活用を促すLifecycle Marketingで役割が違うからです。同様に営業も通常の営業とは別に契約更新専門のチームがいます。また、最近話題のカスタマーサクセスも、DDOMが標準になった当初から営業とは独立したチームとして存在していました。

GTMチームとカウンターパート(出典:アドビ)

 この他、私たちが一緒に仕事をしているチームにStrategy & Operationがあります。データサイエンティストが集まっているチームで、米本社以外でこの機能を持っているのは日本だけです。私たちがダッシュボードを見ていて、もう少し深掘りしたいデータが出てきた時は、このチームに調査を依頼します。また、GTMチームにはプロダクトマーケティングの機能もあり、国内のR&Dに対して必要な機能開発を起案することも仕事の一つです。製品の大幅なバージョンアップのためというより、国内の顧客ニーズへ対応するためのフィードバックが主な目的です。

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