2020年4月に法制化された「STO(セキュリティ・トークン・オファリング)」が、本格的に動き出した。三井住友信託銀行は3月末に、セキュリティ・トークン化した証券を発行し、投資家に販売。今後、個人投資家への販売の可能性も探っている。
セキュリティ・トークンとは、デジタル証券とも呼ばれ、既存の証券をブロックチェーンに乗せてデジタル化することで、管理を容易にし、小口の投資家にも販売できるようにする仕組み。いわば、紙で作られていた証券をデジタル化するものだ。このセキュリティ・トークンは格付投資情報センターから「a-1」の格付も取得した。
今回は、クレジットカードの債権を裏付けにした受益証券を、STOプラットフォーム大手のSecuritize Japanのプラットフォームを使い、トークン化した。通常の証券化商品は、譲渡する際に、民法に基づく対抗要件の具備や有価証券の交付を必要とするケースがあり、手続きが煩雑だ。そのため、株式や債券などのような小口売買が容易ではなかった。
トークン化することで、譲渡の際に、ブロックチェーン上の記録と、受益証券発行信託の原簿を書き換えることで権利が移転できるようになる。
「今年はSTO実質元年。多くの実利用が出てくると思っている。証券化商品のトークン化だけではなく、不動産などについても研究開発を進めていきたい」(三井住友信託銀行)
有価証券のデジタル化に向けて期待されるSTOだが、課題もある。基本となる法律は改正されたが、関連する法律にはまだ未整備な部分があること。また、発行は可能になったが、その後のトークンを売買する二次流通市場が整っていないことなどだ。
さらに取引を完全にデジタル化するには、決済のための通貨の対応も必要だ。トークン自体はインターネット上で権利が移転できるものの、その支払いはいまだ銀行振り込みに頼っている。法定通貨と価値が連動する仮想通貨であるステーブルコインや、CBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)の普及が期待される。
「デジタル通貨がないと銀行振込になってしまう。周辺のインフラもないと、セキュリティ・トークンの本当の良さが出てこない」(Securitize Japanの小林英至カントリーヘッド)
三井住友信託銀行では、名簿を管理したり資産を預かったりする信託銀行ならではの知見を生かせるのではないか、とSTOの今後に期待を示した。
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