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シン・エヴァンゲリオン劇場版でAdobe Premiereは庵野総監督の要望にどう応えたか

» 2021年03月23日 17時12分 公開
[松尾公也ITmedia]

 アドビ公式ブログは3月22日、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』、膨大な素材と緻密な編集を支えたAdobe Premiere Pro」と題した記事を公開した。同日夜にはNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を制作する庵野秀明総監督とスタッフたちのドキュメンタリー「庵野秀明スペシャル」が放映されたが、その内容とも一部重なる、同作品で使われたビデオ編集ソフトである「Adobe Premiere Pro」の活躍を伝えるものだ。

photo アドビ公式ブログ

シン・ゴジラでスタートしたAdobe Premiere使用

 庵野監督とAdobe Premiereとのつながりは、2016年公開作品『シン・ゴジラ』までさかのぼる。

 シン・ゴジラの編集とVFXスーパーバイザーを担当した佐藤敦紀さんが個人的に使っていたPremiereを映画本編でも使うと決めたのが2015年。翌年に公開されたシン・ゴジラでは、庵野総監督がiPhoneで撮影したクリップとメインカメラによる映像が併用されたが、これにはiPhoneやGoProの映像を柔軟に混ぜられるPremiereのファイルハンドリングが役立ったという。

 Premiereはシン・エヴァンゲリオンでも採用が決定した。これは「シン・ゴジラのときに使い勝手が良かった」と、庵野監督がリクエストしたからという。同作品の編集を担当し、3年間同作品の編集担当としてPremiereを使い続けてきた辻田恵美さんはそう説明した。

 シン・ゴジラの時と同じく、シン・エヴァンゲリオンでも庵野総監督はiPhoneを多用した。iPhoneで撮影した素材を送って、それをすぐに編集に反映させることが多々あったという。「とりあえず、どんなものか見てみたいというのが庵野さんのスタイルなので、作業が進むにつれて、これがやりたくてPremiere Proを選んだのだなというのは分かりましたね」と辻田さん。

 庵野総監督のこだわりに対応できるPremiereの機能として辻田さんが挙げたのは、文字ツールの使いやすさ。

 キャラクターが描かれる前のレイアウト決定時に画面上に書き込む指示やコメントにも、庵野総監督は1ピクセル単位で指定してくるのだと辻田さんは振り返る。こうした文字指定の使いやすさが作業効率向上に大きく役立ったという。

リリース前の新機能を搭載した“特別版”を制作陣に提供

 Photoshop Camera用レンズのキャンペーンなど、アドビとの関係性が強く見えるエヴァンゲリオンだが、シン・エヴァンゲリオンの制作に当たっては、ワールドワイドでの動きも反映された。アドビは2018年にハリウッドをはじめとする映画制作コミュニティーに高度な支援を提供するための協力体制をスタート。

 シン・エヴァンゲリオンについては、2019年からこの協力体制に基づいてサポートを始め、リリース前の新機能を搭載したPremiere Proプライベートビルドを提供。これにより、制作チームはPremiereの「プロダクション機能」を利用できるようになった。膨大な素材の量をプロジェクトファイルに直接インポートせず、照会するだけで利用できるようにする機能で、CPUの負荷を軽減し、作業効率化を実現したという。

 なお、プロダクション機能は、2020年4月のPremiere Proアップデートで、正式に提供開始されている

photo アドビ公式ブログ

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