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「自動運転レベル3」対応レジェンド 検証走行は130万km、世界初となる実用化の舞台裏(1/2 ページ)

» 2021年03月04日 19時14分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 本田技研工業(ホンダ)が3月4日に発表した、「レベル3」相当の自動運転を実現した乗用車「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」(レジェンド)。レベル3相当の実用化は世界初となる。

photo 「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」

 「社内一丸で自動運転技術を開発してきた。世界初の実用化となりうれしく思う」「実用化できた時、やったと思った」。報道陣向けのイベントで、開発責任者の青木仁さんと本田技術研究所の杉本洋一エグゼクティブチーフエンジニアの2人が、新型レジェンドの開発エピソードをこう語った。

photo レジェンド開発の舞台裏を語る杉本洋一さん(左)と青木仁さん(右)

“ホンダのチャレンジの象徴”

 国土交通省の基準は自動運転をレベル別に5段階で区別している。このうち、レベル3以上をシステム主体の「自動運転」と定義。現在、広く普及している自動ブレーキ機能や前方の車への追従機能、車線からのはみだし防止機能などは運転主体がドライバーのため、「運転支援」となり、レベル2以下にとどまる。

photo 国交省の自動運転の基準

 ホンダが発表した新型レジェンドは、渋滞時の高速道路でシステムが運転を代行する機能や、前方の車との車間距離が縮まった時に自動で追い越す機能を搭載している。

 自動運転システムを搭載する車種にレジェンドを選択した理由について、青木さんは「レジェンドはホンダのチャレンジの象徴。初代から共通しているのは最新・最高の技術を惜しみなく導入してきたフラグシップ車種であること。これはホンダにとって意義がある」と語る。

 レジェンドの自動運転は渋滞中の道路で前後の車が走行している状態で作動する。時速30km未満で作動し、時速50km以上になると通常のドライバーによる運転に切り替わる。車に搭載したLiDARセンサーやレーダーセンサーで周囲の状況を検知しつつ、GPSなどで自車の位置をシステム側で把握する仕組み。

photo 車に搭載した各センサーが周囲の状況を確認する

 ただ、車がトンネルに入った場合、GPSの電波を受信しづらくなるため、自動運転が作動しない可能性がある他、大雨や豪雪など悪天候の場合も作動しない可能性があるという。

photo レベル3の走行条件

 自動運転中は車内のカーナビ画面で映画などエンタメコンテンツの視聴やナビ画面で目的地設定などの操作ができる。2020年4月に改正された道路交通法では、自動運転車に限りスマートフォンの操作は可能としている。しかし、ホンダはナビが自動運転システムとひも付いていることから、動画などについてはナビ画面での視聴を推奨している。自動運転車を示すステッカーを車体に貼り付けることで、警察の取り締まりの対象外になる。

 自動運転とはいえ、レベル3ではシステム側の操作要求に応じ、ドライバーはいつでも運転できる体制でいなければならない。このため、ナビ画面の隣に備えた赤外線ライト内蔵カメラでシステム側がドライバーの様子を常にモニタリング。例えば、居眠りをしてドライバーの姿勢が崩れた場合、システムが警告する。

 自動運転から通常の運転に切り替わる際は、視覚、聴覚、触覚でドライバーにハンドル操作を呼び掛ける。具体的にはナビ画面のコンテンツをシャットダウンし、画面上に「運転交代してください」とのメッセージを表示。警告音を鳴らし、シートベルトの振動でドライバーに運転を促す。

 ドライバーが運転操作を再開しない場合は、最終的にシステムが自動で減速。非常点滅表示灯の点滅と高音で周囲の車に注意喚起を行い、道路脇に緊急停車する。停車後はコールセンターに接続する。

 当初、画面上に警告メッセージを表示する機能はなかったが、青木さんが検証作業中に再生した動画コンテンツにのめりこんでしまい、システム側の警告に気付かなかったことから搭載された。

 自動追い越し機能は、前方の車との車間距離が縮まった際に作動。車に搭載した各センサーが周囲を走行する車の状況を確認。システムが安全と判断すれば、隣の車線に自動で車線変更し、前方の車を追い越す。その後は再度、安全を確認し、自動で元の車線に戻る。

 サイバー攻撃で車両が乗っ取られることがないよう、車載システムには複数のセキュリティ対策を備えたとしている。

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