「出勤者7割削減」なんて無理な呼びかけは、やめたほうがいい理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2021年01月26日 09時54分 公開
[窪田順生ITmedia]

 緊急事態宣言の延長もささやかれる中、政府や自治体が喉を枯らして「出勤者7割削減」を呼びかけている。

 感染防止策の一つとしてテレワークの徹底が要請されているにもかかわらず、会社に行く人は前回の緊急事態宣言のときほど減っていないからだ。

 例えば、日本生産性本部が1月22日に発表した調査によれば、全国のテレワーク実施率は22.0%。10月の実施率18.9%からわずかに上昇しているが、同じく緊急事態宣言下だった昨年5月の31.5%に比べると約10ポイント低い。また、株式会社NEXERが1月19日から20日に全国1000人を対象に、現在の勤務形態について質問をしたところ、「完全に出勤」と回答した人が64.3%にものぼっているのだ。

1月のテレワーク実施率は22.0%(出典:日本生産性本部)

 ただ、個人的には、日本の産業構造や労働文化を踏まえればこれは「当たり前かな」という印象である。だから、そろそろ「出勤者7割削減」の呼びかけもやめたほうがいいとさえ思う。緊急事態宣言が延長された場合、今のままこの「できもしない目標」をゴリ押しすれば、日本社会にコロナ以上の深刻なダメージをもたらす恐れがあるからだ。

 なんてことを言うと、「命より経済を優先するのか!」「貴様のような人間がいるから感染者が減らないのだ」と殺意を覚える方も少なくないと思うが、コロナは決してナメてはいけない恐ろしい感染症だということにはなんの異論もない。

 しかし、一方でこの日本においては、厚生労働省が、年間推定約1000万人が感染して約1万人が亡くなる、と注意喚起してきた季節性インフルエンザよりも「犠牲者」が少ないのも否定できない事実である。

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