今期の決算ラッシュでひときわ筆者の目を引いたのは「日本航空(JAL)」だ。なぜなら、通例では航空機の写真やスローガンがあしらわれているはずであった決算説明資料の表紙が、今期分は手書きの文字とイラストで構成されていたからだ。
表紙だけでなく、資料の中盤にもより詳細な図表や写真を用いて、機内及び空港施設の安全性を強調する資料が登場する。機内の空気は2〜3分で入れ替わるという説明が繰り返し登場することからも、航空機を安心して利用してもらい、ひいては遠のいた客足の戻りを願う同社の心情がうかがい知れる。
需要急減により窮地に立たされている空運業であるが、かつては不景気に強い傾向があったことをご存知だろうか。そうであるとすれば、なぜ今回の不景気では最も打撃を被った業界の1つに数えられることとなったのだろうか。
リーマンショックと空運業の関係でいえば、2010年のJALの経営破綻が強く印象に残っている方もいるだろう。その事実からすれば、空運業はとてもではないが“優等生”、つまり景気悪化に強いイメージではないかもしれない。しかし、リーマンブラザーズが破綻してから1年間で、最も下落率が低かったセクターが空運業であったこともまた事実だ。その背景には、景気悪化による原油安がある。
リーマンショックでもコロナ禍と同様に、世界的な需要の停滞によって原油価格が大幅に下落した。その結果、ジェット燃料を多く消費する航空業界は安価で燃料を調達することができ、業績をしばらく下支えすることができたのだ。
この前例もあって、一部の投資家の間では、空運業も製薬や電気・ガス業と同様、景気悪化に比較的強い業種として並べられることも少なくなかった。しかし、コロナ禍ではその前例が通用しなかった。
むしろ、TOPIXの反発に全くついていくことができず底値付近で停滞しており、リーマンとは全く逆の立場に置かれていることが分かるだろう。
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