米国のWeChat禁止令で「ファーウェイが伸びアップルが失墜」の可能性浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(1/5 ページ)

» 2020年08月13日 16時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

 トランプ米大統領が8月6日、動画アプリ「TikTok」を運営するバイトダンス(字節跳動)と、メッセージアプリ「WeChat(微信)」を運営するテンセント(騰訊)の中国企業2社との取引を、9月下旬から禁止する大統領令に署名した。TikTokについては以前から「収集されたデータが中国政府に渡るリスクがある」として米議会から問題視されており、今年7月以降は米国で事業禁止に追い込まれる可能性が高まっていたので、想定内とも言える。トランプ大統領は「事業の禁止」に加え「米企業への売却」も選択肢として提示しており、バイトダンスはマイクロソフトなどと協議に入っている。

アメリカで9月下旬から、バイトダンス(字節跳動)とテンセント(騰訊)との取引が禁止される(写真 ロイター)

 今回の大統領令でむしろサプライズだったのは、テンセントとの取引禁止だ。

 米国に先んじて6月下旬にTikTokを禁止したインドでは、WeChatも同時に禁止した。どちらも「ユーザーデータを収集し、中国政府に検閲される恐れがある」ことが理由だったため、米国でも同じ扱いを受けるのは予想されたが、一定期間の議論を経て「事業を続ける」方法も提示されたTikTokに比べると、テンセントとの取引禁止は唐突感を持って受け止められた。

 テンセントは月間アクティブユーザー(MAU)12億人を抱えるWeChatの運営企業として知られるが、実際にはQRコード決済、ゲーム、動画アプリ、フードデリバリー、旅行会社、ヘルステックなどアリババ同様に多種多様な事業を展開し、米国にも多くの子会社を持つ。TikTokが狙い撃ちされているバイトダンスとは違い、米政府はテンセントの何をどのように禁止するのか明らかにしておらず、テンセントも「精査する」以上のコメントを出していないため、さまざまな予想や懸念が噴出している。

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