「カメラ事業売却」の衝撃 業務提携中のオリンパスとソニー、祖業を巡る両社の分岐点とは?コロナ禍で好対照(1/4 ページ)

» 2020年08月07日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 緊急事態宣言こそ解除となったものの、新型コロナ感染者の数が落ち着いたのはほんの一時。感染拡大の第2波であるか否かは別としても、程なく日々の感染者の数はにわかに増え続け、感染クラスターなども再び劇場・職場・飲み会などで次々発生し、一度は緩んだ在宅勤務比率が再び高まってきました。世の経営者の多くは、うっすらと理解していた「ウィズコロナ=コロナとの共存」を前提とした経営方針への転換の必要性を、もはや確実に認めざるを得ないのではないでしょうか。

 このように長期化を余儀なくされた新型コロナ危機がもたらしたものは、世界規模で起きた経済的有事であり、近代以降における産業界最大のパラダイムシフトであるともいえるでしょう。さらに押さえておくべきは、今回のパラダイムシフトが過去の産業革命以降のどの大変革とも異なる局面を持ち合わせていることです。すなわち、過去のどれもが技術革新によって引き起こされ、それを受けマネジメントの構造改革を余儀なくされたものであったのが、今回は真逆であるということ。コロナとの共存という構造変革が先行し、それに呼応してテレワークやオンライン化などの技術面での対応に迫られているのです。

出所:ゲッティイメージズ

 マネジメントは今、過去に対峙したことのない未曽有の有事に直面している、といっても過言ではないでしょう。そう考えるとここで問題になるのは、この未曽有の有事発生に対して企業マネジメントはいかにあるべきなのか、ということです。セオリーで申し上げればパラダイムシフトに対応する企業マネジメントの基本は、一つは「ゼロベース思考」での対応であり、もう一つは「原点回帰」であります。ゼロベース思考は先入観を捨てるという姿勢の重要さを強調したものですが、原点回帰は有事対応時にこそ自社事業発展の源に立ち返り自社の過去の成功体験を検証することで、あらためてコアコンピタンス(他社にない独自の強み)を認識し変革局面打開のヒントをあぶりだすことの重要さを説くものです。

 今回多くの企業がコロナ対応に苦慮する中で、すでに大きな戦略を打ち出す動きがいくつか目についています。パラダイムシフトを早期に察知して次なる戦略的展開を打ち出す企業、ここを経営の曲がり角と捉えて懸案事項を含め大きく舵を切った企業、あるいは新たな事業投資に向けた資金確保を目的として選択と集中に一層の力を込める企業――。どの戦略遂行においても、上記のセオリーは共通のものとなります。大きな変革期には特に、原点回帰という「祖業」を顧みていま一度原点に立ち返る姿勢こそが、この先の雌雄を決することになるのではないかと個人的にはみています。

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