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「景気後退認定」で露呈した“経済指標のタイムラグ”埋めるか 巨大市場となったオルタナティブデータ業界金脈は身近なところにある(1/3 ページ)

» 2020年08月07日 07時15分 公開
[森永康平ITmedia]

 内閣府は2012年12⽉から始まった日本の景気回復局面が18年10月に終わっていたことを認めた。これにより、日本の景気拡大期間は71カ⽉にとどまり、08年2⽉まで73カ⽉続いた「いざなみ景気」の戦後最⻑記録を更新しないこととなる。

phot 景気動向指数の推移(内閣府のデータを基にマネネ作成)

 そうなると、なぜ19年10月に消費増税を断行したのかという意見が出るだろう。実感があるかどうかはさておき、いざなみ景気を超える戦後最長の景気回復局面だから消費増税を実行したのではなかったのか。しかし、結果的には景気後退局面の真っ只中に消費増税をしたことになり、19年10〜12月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率-7.2%と大幅なマイナスとなった。消費増税によって消費が冷え込み、景気が更に悪化していたところに、新型コロナウイルスの問題が起き、景気は前例がないほど減速してしまったのだ。

 政府は消費増税前には「リーマンショック級の危機」が起きない限りは増税を断行すると言っていた。だが、リーマンショック以上のコロナショックが起きているにもかかわらず、現時点では消費減税の具体的な話は聞こえてこない。

phot 景気動向指数の推移(内閣府のデータを基にマネネ作成)

経済指標にはタイムラグが生じる

 景気後退の真っ只中に消費増税を断行したという点だけではなく、そもそもなぜ18年10月に景気回復局面が終わったことが20年の7月になって発表されるのか――。こうした疑問の声が聞こえてくる。しかし、これは決して「消費増税をするために発表を意図的に送らせていた」などという陰謀論ではなく、景気の転換点の認定は今回に限らず1年以上かかっている。景気というものは機械的に波を打つわけではないため、景気が回復したと思っても急に失速してしまったりする。このため、このようなノイズを除いて趨勢(すうせい)を確認するために時間がかかるのだ。

 しかし、それでももう少し経済の状況をリアルタイムに近い感覚で把握できないのか。投資家を中心にこのような要望も聞く。確かに、国が発表する経済指標はタイムラグが大きい。例えば、総務省統計局による「家計調査」は最新のデータが7月7日に発表されているものの、そのデータ自体は5月分のものだ。つまり、1カ月以上もタイムラグがあることが分かる。調査をしてから集計をして資料を作成するので、どうしても時間がかかってしまうのは仕方ない。だが、とはいえもっと早く情報を得ないと使い物にならない。

 そこで、昨今ではこれまで経済指標としては使えないと思われていたデータを活用して、速報性のある経済指標を算出しようとする動きが加速している。伝統的な経済指標に対し、このようなデータをオルタナティブデータと呼ぶ。オルタナティブデータにはさまざまな種類のデータが含まれ、衛星画像やクレジットカードの決済データ、POSデータ、SNSの書き込みや口コミサイトのレビューなど、その対象は非常に幅広い。

 コンサルティング企業のオピマス社は、オルタナティブデータの市場規模が20年に70億ドル(約7350億円)にまで拡大すると予測している。オルタナティブデータのプロバイダーであるイーグル・アルファ社によれば、プロバイダーの数は3年間で3倍になり、現在でも全世界に1126社あるという。

phot (出所):Opimas Analysis『Alternative Data – The New Frontier in Asset Management』
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