10万台以上売れているUCCの「ドリップポッド」、人気の秘密は?あの会社のこの商品(1/5 ページ)

» 2020年08月06日 08時38分 公開
[大澤裕司ITmedia]

 おいしいコーヒーを飲むには、淹(い)れ方に気をつけたいところ。だが、気をつけるべきポイントがいくつもあり、面倒臭く感じる人もいるだろう。誰でも簡単に、おいしいコーヒーを一杯ずつ淹れることができるように開発されたのが、UCC上島珈琲の「ドリップポッド」である。

 2015年3月に発売されたドリップポッドは、一杯抽出型コーヒーシステム。炒(い)りたて、挽(ひ)きたてのコーヒーを一杯分ずつ個包装したカプセルと専用マシンで構成される。まずは家庭用から販売が始まり、現在はオフィスやホテル、外食などに向けた業務用も販売。両方合わせて、累計10万台以上を売り上げた。

ドリップポッドの専用マシンで20年1月に発売されたばかりの「ドリップポッド DP3」
16年9月に発売されたドリップポッドの専用マシン「ドリップポッド DP2」。ドリップポッド DP3より丸みを帯びており、背面のアーモンド型水タンクが特徴的だ

最高の一杯を届けたくても届けられない

 ドリップポッドの事業を手掛けているのは、UCCグループのソロフレッシュコーヒーシステム。16年4月に設立された新しい会社だが、社長の柳原優樹さんによれば、ドリップポッド誕生の背景にはある悩みがあった。それは一体何か? 柳原氏はこう続ける。

 「UCCは農園で苗木を育てるところから、外食店などでカップ1杯のコーヒーを提供するところまで、一貫した事業を展開しています。海外でコーヒー農園を直営したり生産地での技術指導も行っており、仕入れたコーヒー豆やそれを使ってつくった商品を家庭用や業務用のチャネルで販売していますが、特に家庭用の場合、抽出という一杯のコーヒーにするための最終工程がお客さま任せになってしまいます。抽出のアドバイスはすることができても、私たちが思っているおいしいコーヒーをお客様のところに確実に届けることができないことに、長年悩んでいました」

 セオリー通りに抽出すればおいしいコーヒーができるが、そのセオリーを消費者に伝えきれない。最高の一杯を届けたいというUCCの思いも伝わらず、もどかしさを感じずにはいられなかった。

 セオリーを意識することなく、おいしいコーヒーを淹れるにはどうしたらいいか――。この問いに対する答えがドリップポッドであった。

 開発が始まったのは13年からだが、実はUCCでは12年9月に、ドリップポッドに先んじて独自開発した一杯抽出型コーヒーシステム「UCCエコポッドシステム」を発売している。UCCエコポッドシステムは専用マシンの「UCC Pelica(ペリカ)」と、新開発の不織布にレギュラーコーヒーや紅茶などの茶葉を一杯分ずつ詰めた「エコポッド」で構成。ドリップポッドとは専用マシンのスペックや、エコポッドが個包装されていない違いがある。

UCCエコポッドシステムで使用する専用マシン「UCC Pelica」

 UCCエコポッドシステムは専用マシン、エコポッドの開発を個別に進めていた。そこでドリップポッドの開発に当たっては、専用マシンとカプセルの相性や互換性を高めるため、一体で開発することに。将来の事業の柱にしたかったことなどから、UCC内で1つの事業として位置付けられて開発が進められることになった。

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