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リモートワークに適応できないマネジャーが見直すべき、マネジメントの本質社員研修のプロが語る(1/3 ページ)

» 2020年08月06日 07時00分 公開
[朝倉千恵子ITmedia]

 「部長、お疲れさまです!」

 リモートワークをしているはずの上司が会社に忘れていったノートパソコンに向かって、部下があいさつをする。もちろん皮肉ですが、コロナ禍でそんな冗談のような光景が繰り広げられた企業もあると耳にしました。皆さんの会社ではどうですか。

 新型コロナウイルスの感染拡大、そして緊急事態宣言の発令により日本の働き方改革は大きく前進しました。これまでは一部の企業だけのものだと思われていたリモートワークも、多くの企業が一斉導入することになりました。

photo 写真はイメージです

 私が代表を務めるのは、人材教育の会社です。そのためとてもありがたいことに、研修を導入する側の経営者、管理者の話と、研修を受講する側の一般社員、新入社員の話を双方から聞くことができます。コロナ禍では、これまで通りのリアルでの研修はできませんでしたが、SNSやWeb会議、そしてライブ配信などを通してさまざまな意見を聞かせていただきました。

 そんな中、私は「この状況にいち早く適応しようとしているのは若い世代の人たちで、むしろもっと意識を改革しなければいけないのは経営者、マネジメントの層だな」と感じていました。

 冒頭に挙げたエピソードも、それを象徴しています。リモートワークは、仕事ができない社員を炙り出すといわれていますが、それは管理者も同じです。これまで会社にいて、目についた社員を怒鳴り散らすことが仕事だと思っていた部長は、リモートワークでは何をすれば良いか分からずに、あ然としていることでしょう。

筆者:朝倉千恵子(株式会社新規開拓 代表取締役社長) 

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 小学校教員を経て、一般企業の営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。

 04年株式会社新規開拓を設立。現在までに延べ17万人の社員研修・人材教育に携わる。女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、TSL「トップセールスレディ育成塾」を主宰。卒業生は2500名を超える。

 著書は全39冊、累計売上部数は約48万部。『コミュニケーションの教科書』(フォレスト出版)、『すごい仕事力』(致知出版社)など。


リモートワークは生産性が下がる?

 リモートワークの是非を問う調査がさまざまなところで行われていますが、やはり管理者層と一般社員の層では感じ方が違うという結果が出ています。カオナビが5月にインターネットで実施した、リモートワークについての意識調査によると、部下がいる人と部下がいない人では結果に大きな差が出ていました。

 例えば、在宅勤務、テレワーク、リモートワークなどの出社しない働き方が「働きづらい」と答えた割合は、部下がいない人では17.3%だったのに対して、部下がいる人では34.0%と倍近く差が出ています。

 また、出社しない働き方で「自身の生産性(業務のスピードや質)が下がった」と答えた割合は、部下がいない人では31.3%、部下がいる人では44.7%と、こちらでも差がついています。

 もちろん管理者と一般社員では、業務内容が異なるため単純な比較はできませんが、管理者が「実際に会えなくて細かいフィードバックができず、生産性が下がった」と感じていることが事実としてそうなのであれば、部下も「上司からの適切なフィードバックがもらえず生産性が下がった」と感じていないのはどこか不自然に思えます。

これまでの枠を出ないと、新しいことはできない

 リモートワーク下でのマネジメントについて多くの管理者が陥るポイントが、「これまで自社でやってきた方法を、リモート環境に無理やり適用しようとする」ことです。

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