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KDDI「ジョブ型移行」が暗示――“企業社会で居場所消滅するサラリーマン激増”の未来“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

» 2020年08月04日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 KDDIが、業務に対して処遇する「ジョブ型雇用」を導入する方針を打ち出したことが話題となっている。これは事実上、日本型雇用の崩壊であり、今後は多くのビジネスパーソンがキャリア戦略の根本的な見直しを迫られることになるだろう。

photo ジョブ型雇用が広まると職場に居場所が無くなる人も(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

ジョブ型化=日本型雇用の崩壊

 同社には約1万3000人の正社員が勤務しているが、今後、段階的にジョブ型の雇用に移行する。ジョブ型の雇用は業務内容を明確にした上で、成果に対して賃金を支払うという雇用制度であり、欧米企業では一般的な形態といってよい。

 日本では一般的に、雇用形態には社員であることそのものに賃金を支払うメンバーシップ型と、職務内容に応じて賃金を支払うジョブ型の2つがあるなどと説明されている。だが本来はこうした区分など存在しないと思ってよい。日本型の特殊な雇用制度にあえて名前を付ければメンバーシップ型になるというだけの話であり、基本的には業務に対して賃金を支払うというのが世界の常識である。

 今回、KDDIがジョブ型の雇用形態に切り替える方針を表明したということは、いわゆる日本型雇用を撤廃することと同じ意味になる。日本型雇用は、終身雇用、新卒一括採用、年功序列の3つを特徴としているが、この3つの慣行は経済成長が半永久的に続かない限り、維持することが難しい。

 日本は人口減少から既に経済の縮小フェーズに入っており、今後、企業業績が伸び悩むことは確実な情勢となっている。こうした環境においては、業務に対して賃金を支払う方式にしなければ総人件費を抑制できない。日本型雇用が限界に近づいていることは、既に多くの人が感じていることだが、従来の雇用慣行の継続を求める声は多く、制度改革は進んでいなかった。

 KDDIは今回の措置について、コロナ危機を直接的な理由にしているわけではないが、コロナ危機が新制度の導入を後押しした可能性は高いだろう。他にもジョブ型への移行を検討している企業が増えており、結果的にコロナが時代を変えるきっかけになっている。

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