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コロナ禍で問い合わせ5倍 バーチャル空間で会議・イベント……VRのビジネス活用に再注目(1/2 ページ)

» 2020年07月30日 08時00分 公開
[らいらITmedia]

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、多くの企業がテレワークを導入するなど、人々の働き方は大きくシフトしている。それに伴い、チャットツールやビデオ会議システムなどを使ってオンライン上でコミュニケーションする機会も格段に増えてきた。

 しかし、同時にオンライン上のコミュニケーションならではの課題が浮き彫りになり始めている。画面越しに顔を見ながら会話できるとはいえ、「雑談が生まれにくい」「参加意識が出にくい」など、リアルのコミュニケーションに比べれば物足りない部分は多い。

 その課題を解決できるテクノロジーとして注目を集めているのがVRだ。VRならではの「今、そこにいる感覚」は、よりリッチなコミュニケーションを生み出し、ときには現実では不可能な体験をも実現する。

 ウィズコロナ/アフターコロナの世界では、VRはビジネスでどのように活用されていくのか。今回、法人向けVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ(ニュートランスビズ)」を提供するSynamonの武井勇樹氏に話を聞いた。

NEUTRANS BIZのVR空間。参加者同士は現実と同様、顔を向き合って対話ができる

コロナ禍で問い合わせが5倍に急増

 NEUTRANS BIZは、複数人が同時にバーチャル空間に接続し、物体や空間のビジュアルデータを共有しながらコミュニケーションできる法人向けのプラットフォームサービスだ。ユーザーはバーチャル空間にアバターとして参加でき、コントローラーを使えば身振り手振りを伴ったコミュニケーションが可能となる。

NEUTRANS BIZのVR空間。資料を画面に映し出し、そこに書き込みながら説明できる
一方、参加者は現実と同じ視点で資料を見ながら説明を聞くことができる

 バーチャル空間上では、資料を映してペンで書き込んだり、カメラの視点を切り替えたりして、現実と同じような没入感のある体験を実現する。さらに、空間上に文字を手書きしたり、模型のようなオブジェクトを置いて手でクルクル回したり、拡大縮小したりといった現実ではできない体験も可能にしている。

 企業への導入事例はオンライン会議やウェビナー、研修など幅広い。バーチャル空間自体をカスタマイズできるため、現実のショールームをバーチャル上に再現する「バーチャルショールーム」としての引き合いもあるという。

空間への書き込み機能、空間上でのオブジェクト操作など、バーチャル空間ならではの体験も提供する

 コロナ禍でイベントの自粛やテレワークが推進したことで、同社への問い合わせは昨対比で5倍に急増した。最近は展示会が3密を理由に実施できないため、ブースをバーチャルで再現する「バーチャル展示会」の問い合わせも増えてきたという。

 「不動産業界や製造業界、建築業界からは、3DCGを活用して、模型などを見ながらコミュニケーションを取りたいという引き合いがあります。IT系やSIerからは、『顧客からVR会議のニーズがあるので一緒にやらないか』という要望もありました。他にも、医師向けのセミナーで利用したい製薬会社、授業の一環で使いたい学校、働き方改革でテレワークを推進したい部門など、引き合いは多種多様です」

SynamonでVP of Business Developmentを務める武井勇樹氏。2018年5月にSynamonに入社後、ビジネス全般のマネジャーを担当する。今回はオンラインで取材を実施した

 さらに、企業の動機も変化してきている。コロナ以前は将来伸びる分野として先行投資的な意味合いで導入する企業が多かったが、コロナ以降は急速にテレワークが推進されていることもあり、導入への緊急度が高まっているという。

 「『3カ月後のこのイベントをバーチャルでやりたい』『オフィス縮小を考えているのでバーチャルでコミュニケーションできるか検証したい』といった緊急度の高い問い合わせに変わってきたと感じます」

 では、コロナ以前からすでに導入している企業はどのような使い方をしているのか。具体的な活用事例を見ていこう。

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