日本ではソフトウェアエンジニアであったがドイツに渡ってミュージシャンとして生計を立てている著者は、CADソフトウェアを使った業務もこなしている。そこで出会ったソフトウェアはデザインの新しい潮流を感じさせるものだった。このツール、「Grasshopper」(グラスホッパー)をドイツで活用している建築設計事務所へのインタビューを交えながら、その革新的な利用方法をお届けする。
1mmの描画の誤りが、全てを台無しにしてしまうこともある。描く、という仕事は大変な仕事だ。
建築設計におけるパース画、土木設計における橋梁や排水管設計図、機械設計のブループリント、アニメーション制作における高層ビル群などの背景画や、ロボット/戦艦などメカ細部の描画、漫画制作における女性のドレスや下着などへの繊細なレース模様の描き込み。どれもこれも、人間に高度な集中力と、長時間労働を余儀なくさせる大変な仕事であった。少なくとも80年代までは。
90年代以降、これらの作業軽減のためにITを活用するべく、CADに代表されるさまざまなソフトウェアが登場した。そして近年、建築/土木業界における設計作業では、ビジュアルプログラミングツールが注目を浴びている。例えば米Revitの「Dynamo」(ダイナモ)や、CADソフト「Rhinoceros」(ライノセラス)のプラグインである「Grasshopper」(グラスホッパー)といったソフトウェアのことであり、欧米を中心として、日本も含む世界中で利用され始めている。
これらソフトウェアの利用により、建築/土木デザイナーは、複雑ではあるものの数学/幾何学法則性のある設計をコンピュータに任せ、もっと他のことに脳のリソースを割く可能となる。例えば、太陽光パネルの設置でどれだけ電力を自力で賄(まかな)えるか、過去の気象データなどから推定する降雨予想量から農業に必要な水道代の見積もりはいくらか、水害を起こさない環境デザインとしてはどの造形がベストか、などといったシミュレーションは、コンピュータに任せられるタイプの作業だ。
今回は、そうしたソフトの1つ、RhinocerosとGrasshopperでできることについて紹介しよう。
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