攻める総務

「Web会議の導入」だけではダメ、テレワークがうまくいかない理由第2波に備えて(1/3 ページ)

» 2020年07月14日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、従業員の感染防止策として、多くの企業でテレワークの導入が進んだ。パーソル総合研究所が全国の就業者を対象に行ったアンケート調査によれば、テレワークの実施率は3月9日〜15日の期間が13.2%だったのに対し、7都府県の緊急事態宣言後(4月10日〜12日)には27.9%と倍増した。

 テレワークに移行した従業員の満足度も高く、コロナ収束後のテレワーク継続希望率は69.4%だった。特に若い年代や女性の間で継続希望率が高く、20代女性では79.3%に達している。テレワークは感染症対策としてだけでなく、多様な働き方を可能にする仕組みとして支持されているといえるだろう(むしろ後者の方が従来掲げられてきた価値だったわけだが)。

 しかしこの調査では、気になる傾向も出ている。テレワーク実施率が、緊急事態宣言解除後の5月29日〜6月2日の期間に、25.7%と若干ながら減少したのだ。「テレワークを行っていたが現在出社している理由」では「テレワークを行える業務ではない」(35.7%)がトップだった。これは仕方のないところがあるだろうが、第2位は「テレワーク制度が整備されていない」(30.3%)、第3位は「テレワークのためのICT環境が整備されていない」(21.4%)で、制度や環境面での不備が挙げられている。

photo パーソル総合研究所が発表した「緊急事態宣言解除後のテレワークの実態について調査結果」より

 新型コロナウイルスのさらなる感染拡大、いわゆる「第2波」の可能性は否定できず、その存在を前提とする世界「ウィズコロナ」の到来に備えなければならないという指摘もある。また、感染症対策だけがテレワークの目的ではない。新型コロナ新規感染者数の減少はテレワーク終了のシグナルではなく、むしろ時間的な猶予が得られたと捉えて、テレワークの制度・環境面の整備を加速させるべきだろう。

テレワークがうまくいかない理由

 Basecampという、プロジェクト管理Webサービスがある。便利で手軽に使えるとして人気のツールだが、運営するBasecamp社は、創業当時から徹底したテレワークを導入してきた企業としても知られている。その経営者であるジェイソン・フリードと、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンは、自社でテレワークを成功させた秘訣を、Remote: Office Not Require(リモート:オフィスは不要)という本にまとめている(『強いチームはオフィスを捨てる』というタイトルで邦訳も出ている)。

 彼らは同書の中で、テレワークに対する批判は誤解に基づくものがほとんどであり、現在のITがあれば、組織の大小を問わず問題を克服できると主張している。ではなぜテレワークに対する抵抗があったり、うまくいかないケースがあったりするのか。

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