フィンテックで変わる財務

25%還元のマイナポイント 2100万枚のマイナンバーカードを倍増させられるか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2020年07月03日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 消費税引き上げによる需要減退を緩和するために導入されたキャッシュレス還元事業が、6月30日に終了した。延長を希望する声も強かったが、当初の予算を大幅にオーバーしたこともあり、延長は叶わなかった。

 政府が次に用意した還元策が「マイナポイント」事業だ。マイナンバーカードと任意のキャッシュレス決済サービス1つをひもづけることで、支払額の25%が還元される。還元上限は5000円で、還元率が最大となるチャージまたは購入金額は2万円となる。

 政府の予算案によれば、想定以上の利用がみられたというキャッシュレス還元事業には累計で7750億円が充てられた。一方で、マイナポイント事業は4000万人の利用を見越して2478億円の予算が充てがわれている。このマイナポイント事業の有効性を語る前に、まずはキャッシュレス還元の成果を確認していこう。

キャッシュレス還元の成果

 一般社団法人キャッシュレス推進協議会の調べによれば、7割以上の国民がキャッシュレス還元事業の存在を認識しており、いずれの地域においても5割以上の消費者がキャッシュレス還元事業をきっかけにキャッシュレス決済を始めたり、決済手段を増やしたりしたことが分かった。

 新たにキャッシュレス支払いを開始した、いわゆる真水の部分は全国平均で17.5%となっており、日本におけるキャッシュレス決済の普及度拡大に貢献したといえるだろう。この真水部分を日本の人口に換算すると、2213万人が新しくキャッシュレス人口に加わったことになる。

 還元事業を開始した2019年10月時点で参加していた事業者への調査では、増税直前の19年9月から20年4月の比較で、売上高に占めるキャッシュレス決済比率が1.25倍の26〜33%まで増加した。

小規模事業者はコロナで現金回帰? オコスモ作成 小規模事業者はコロナで現金回帰?(キャッシュレス推進協議会の資料をもとに筆者作成)

 ちなみに、売上高5000万円未満の中小事業者については、足元のキャッシュレス比率が20年1月と比較して減少している。これは、コロナ禍の影響で、即座にキャッシュフローが期待できる現金に回帰するという動きの表れであると考えられる。

 18年にキャッシュレス検討会が策定したキャッシュレス・ビジョンでは、25年にキャッシュレス決済比率を40%にするという目標が掲げられてきた。還元で通常よりもキャッシュレス決済を選択する人が増加している影響や、キャッシュレス決済に対応している店舗のみの調査であることを割り引く必要はあるが、本調査における売上高キャッシュレス決済比率は全国平均で32.7%となっている。

 現在キャッシュレスを利用している消費者の8割程度が「還元事業終了後もキャッシュレスを利用したい」と回答していることも踏まえれば、「25年に4割」という目標達成もやや現実味を帯びてきた。

 このように、巨額を投じたキャッシュレス還元事業は、増税直後の消費落ち込み対策と同時に、キャッシュレス化の推進にも貢献した。それでは、マイナポイント事業もマイナンバーカード普及率増加という成果を残せるのだろうか。

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