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freee佐々木大輔CEOが語る「中小企業にテレワークが浸透しない」納得理由アフターコロナ 仕事はこう変わる(1/3 ページ)

» 2020年06月29日 09時41分 公開
[香川誠ITmedia]

アフターコロナ 仕事はこう変わる:

 新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、業務の進め方を見直す企業が増えている。営業、在宅勤務、出張の是非、新たなITツール活用――先進的な取り組みや試行錯誤をしている企業の事例から、仕事のミライを考えていく。

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 新型コロナウイルスは人々の経済活動を減退させたとともに、日本企業の非効率なシステムを浮き彫りにした。海外ではドイツや英国などで在宅勤務の権利を認める法整備が検討されているほか、Twitter社やFacebook社のように企業主導で在宅勤務の標準化を進める動きも見られる。

 日本では緊急事態宣言が解除された5月25日以降、在宅勤務を終了した企業も多いと見られ、都心ではビジネスパーソンの出勤風景が戻りつつある。6月1日から5日までの平日5日間の首都圏のJR利用客は、5月18日から22日までの5日間に比べて54%も増えたという。依然として出社を前提とした勤務体制を維持する日本企業が多いなか、「ウィズコロナ」の環境下で生産性を高めていくためには、何をどう変えていけばいいのか。

 自社のリモートワーク率99%を達成し、社外に向けてはリモートワークの課題を取り除くムーブメントを立ち上げるなど、効率的な働き方を追求するfreeeの佐々木大輔CEO(最高経営責任者)に、日本企業に根付いた課題と解決への糸口、アフターコロナの働き方を聞いた。

photo 佐々木大輔(ささき・だいすけ) Googleで、日本およびアジア・パシフィック地域でスモールビジネス向けのマーケティングチームを統括。 その後、2012年7月freeeを設立。Google以前は博報堂、投資ファンドのCLSAキャピタルパートナーズにて投資アナリストを経て、レコメンドエンジンのスタートアップであるALBERTにてCFOと新規レコメンドエンジンの開発を兼任。一橋大学商学部卒。専攻はデータサイエンス(以下、写真はfreee提供)

対面営業が日本の労働生産性を下げている

――新型コロナウイルスの影響で、日本企業の働き方は変わったと感じますか?

 リモートワークを進めたり、これを機にコストを見直したりと、この時期を前向きに乗り切ろうとする企業が多かったように思います。とりわけ変化が大きかったのはインターネット業界です。多くの企業でリモートワークが前提の働き方になって、中にはオフィスの賃貸契約を解約する会社も出てきています。

――インターネット業界以外ではどうでしょう?

 他業種でも、ミーティングをビデオ会議で行う会社が増えました。ただ、その経験やスキルは、業種により差が開いていると感じます。ビデオ会議で気を付けることやうまく進めるための勘所は、リアルでのミーティングとは異なるので、経験を重ねていく必要があると思います。

――個人の変化で注目している点は?

 地方や郊外に引っ越して、リモートワークをしながら新しいライフスタイルを実践している人が短期間で増えたことです。今はまだ決して大きなトレンドではありませんが、変化の予兆として今後ウォッチしていくべきことだと思います。

――リモートワークの利点はどこにあるのでしょう?

 移動時間がないことです。例えば営業の場合、これまでは営業する側からお客さまを訪問するのが当たり前でした。迎える側も、わざわざ来てくれたのにすぐに追い返すのも悪いからと、30分なり1時間なり付き合ってくれます。

 でも本当は15分くらいで済む話も多いですよね。訪問先での滞在時間が1時間としたら、移動時間も含めるとトータルで2時間や3時間かかってしまいます。日本は時間あたりの労働生産性が主要先進国の中で最下位という状態が長らく続いていますが、全ての営業が訪問形式で行われていることも、その理由の1つだと思います。

――確かに3時間かかることが15分で済めば、ほかの仕事にも手が回せますね。佐々木CEOが起業前に勤めていたGoogleはグローバル企業ですが、ビデオ会議は浸透していましたか?

 ミーティングはビデオ会議が当たり前で、「何で同じフロアにいるのにビデオ会議をしているんだ?」といったこともあったくらいです(笑)。海外では営業も含めてビデオ会議がもう当たり前になっているし、日本でも「全てが全て対面である必要はない」となれば、みんなの意識も変わってくると思います。空いた時間が増えれば、それだけその人が提供するサービスの付加価値が上がり、ビジネスも拡大しやすくなります。

photo リモートワークによってfreeeのオフィスには社員が全くいなかった
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