堀江貴文がミュージカル『クリスマスキャロル』で仕掛ける「新時代の舞台ビジネス」「商業的成功」が不可欠(1/3 ページ)

» 2019年12月12日 05時00分 公開
[今野大一ITmedia]

 ホリエモンこと堀江貴文が「演劇界の常識破り」に挑戦している。12月11日から15日まで東京キネマ倶楽部で、 12月24日から25日まで大阪市の味園ユニバースで計6日間、英国の作家チャールズ・ディケンズ原作のミュージカル『クリスマスキャロル』を公演する(昼と夜の2部構成)。

 堀江が同公演に取り組む理由、堀江が考えるAI(人工知能)時代の仕事の在り方や働き方についての考えは「僕の足を引っ張らない社会を作る――ホリエモンが演劇をアップデートする理由」として2018年にレポートした通りだ。

 今回は12月10日に実施された関係者向けの「ゲネプロ公演」を取材した。公演実施に際して、堀江が演劇を取り巻く状況をどのように捉え、今回の再演に際してどんな対策をしてきたのかをビジネス的な観点からインタビューした。

phot 堀江貴文(ほりえ・たかふみ) 1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダー。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。19年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「MOMO3号機」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。2015年より予防医療普及のための取り組みを開始し、2016年3月には「予防医療普及協会」の発起人となり、協会理事として活動。予防医療オンラインサロン「YOBO-LABO」にも携わる。著書に『健康の結論』(KADOKAWA)『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)『捨て本』(徳間書店)など多数(撮影:山崎裕一)

保守的な業界への革新

 「既存の演劇界はとても保守的だと思います。演劇というものが一般の人にとってすごくハードルが高い状態なんですよ。僕は大学時代に演劇を見るゼミに入っていたので、実は観劇歴がかなり長いんです。でも普通の人が突然、演劇を見に行ってエンタメとして楽しめるかというと、どうしても小難しく感じられる部分が出てきてしまいます。

 だから僕は、演劇を普段は見ないような人たちをいかに連れて来られるかが重要だと考えています。サッカーやラグビーなどスポーツでもそうですが、『にわか』と呼ばれる人たちを大事にしなきゃいけないんですよ。そういう人たちに刺さるような新しい取り組みをしていきたい。演劇のマーケットにはまだまだポテンシャルがある」

 記者が堀江に『クリスマスキャロル』再演の狙いを尋ねるとこんな答えが返ってきた。同公演の大きな特徴は「観客が公演中に飲食ができる」というスタイルにある。これは以前の記事「僕の足を引っ張らない社会を作る――ホリエモンが演劇をアップデートする理由」でも触れた通り、歌舞伎の文化を踏襲した観劇方法であり、演劇のことをよく知らない人が来場しても気楽に、そして自由にミュージカルを楽しめるようにする仕掛けなのだ。

 観劇しながらディナー席に出される食事は東京都文京区のイタリアン、インボスコの渡部敏毅シェフによるもので、良質な和牛が使われている。劇の進行に合わせて最適なタイミングで食事が配膳されるように工夫が懲らされていた。堀江は、飲食と劇が一体となった新しいミュージカル体験を創出しているのだ。

phot 「マグロのタルタルとキャビア」「イタリア直送ブッラータとカラスミ」「和牛ミニバーガー」「生ハムとフルーツ」「エーデルワイスファーム焼豚スライス」が前菜として出された
phot メインの肉料理「美崎牛のローストビーフ ポルチーニソース」
phot 平和酒造(和歌山県海南市)の日本酒・紀土 「無量山」。この日は山本典正社長自ら観客に振る舞っていた

 「ものすごく商業的だと思われるかもしれないけど、いいじゃないですか。じゃあ芸術的な部分が一切ないかというとそんなことはない。クリスマスキャロルはとてもいい脚本なんです。間口を広げることで、この物語を知らない人にも知ってもらえます」

 同公演は堀江が演じる主人公・スクルージがお金に執着した偏屈な生き方を見つめ直し、"素直な自分に回帰する”ことをテーマにした作品だ。「IT企業の経営者として未曾有の成功を収めたものの、 社内では『お金が全ての守銭奴』と恐れられ、 クリスマスに対し憎しみとも取れるような感情を持っている」という設定になっていて、「人間ホリエモン」を体現するようなストーリーになっている。「プロ野球の球団を買収しようと思ったこともあったなあ。大人の都合でやめたけどな」といったせりふなど、堀江ならではの笑いを誘う場面も多々あった。

 堀江は公演を実施するに当たって、吉本新喜劇や2.5次元ミュージカルのように、舞台にそれほど詳しくない普通の人でも純粋にエンタメとして楽しめるものを目指したいと語った。

phot 主役のスクルージは堀江自ら演じる
phot ヒロインのケイト役を演じた武田玲奈
phot ステージの向かいで食事を楽しみながら観劇する独特のスタイルだった
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