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 AI(人工知能)をはじめとした最新ITに対する医療現場の期待は大きい。現場のニーズに応えるため、国内の大手IT各社は医療機関と組んで実証実験を展開したり、新システムを開発したりしている。既存のハードウエア事業などが縮小するなか、新たな収益源を確保する狙いもある。

表 大手IT各社におけるヘルスケア関連の取り組みの例
ヘルスケアを成長分野と位置付ける
表 大手IT各社におけるヘルスケア関連の取り組みの例
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 富士通は東京大学医科学研究所(東大医科研)と組んで、がんゲノム医療の効率化に向けた共同研究を進めている。傘下の富士通研究所と東大医科研が2018年4月に始めたもので、急性骨髄性白血病の治療方針の検討時間を半分以下に削減する効果を確認できた。

 富士通研究所は東大医科研との共同研究向けに、言語処理のAI技術を適用した。国立がん研究センターがん情報サービスによると、日本で白血病にかかる人は年間1万2000人を超えるとされる。仮に全患者に同技術を活用したゲノム医療を試すと、専門医による検討時間を6000時間から3000時間以下に減らせると見込む。

 NTTデータは2019年8月までの約半年間、宮崎大学医学部附属病院で同社が開発したAI画像診断システムの実証実験を展開した。附属病院の患者700人を対象に、腎臓の異常の検出精度を測った。同社によるとがんの診断で9割近い正解率を出した。

NTTデータが開発したAI画像診断システム。黄色の部分は臓器の異常を表す
NTTデータが開発したAI画像診断システム。黄色の部分は臓器の異常を表す
(出所:NTTデータ)
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 さらにNTTデータと宮崎大学は2019年10月から、AI画像診断システムが見つけ出した異常から病名を特定するアルゴリズムの開発も始めた。2020年度中にも、実際の診断業務で同システムが医師の負担をどの程度減らせるかを検証する。