日米貿易協定は“不平等条約”か――安倍政権が国民に隠す「真の欺瞞」“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

» 2019年12月03日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 10月に署名された日米貿易協定が今国会で可決・成立の見通しとなっている。この協定を巡っては、「米国相手によくがんばった」という声がある一方、「日本があまりにも譲歩しすぎ」「不平等条約そのもの」といった手厳しい意見もある。実際のところ、この協定は日本に不利な不平等条約なのだろうか。また、貿易交渉というのは、どのように進めるべきものなのだろうか。

photo 成立の見通しの日米貿易協定。果たして“不平等条約”か?(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

肝心の自動車追加関税は回避、だが……

 米国トランプ政権は、当初、加盟を予定していたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定からの離脱を表明し、貿易相手国と個別に協定を結ぶ戦略に転換した。つまり米国の利益を最優先するというスタンスだが、こうした米国側の動きを受けてスタートしたのが日米貿易交渉である。

 この交渉は19年の前半から続けられてきたが、9月に行われた安倍首相とトランプ大統領の首脳会談で大筋合意に至り、10月7日に正式署名された。

 日米交渉の最大の注目点は、日本がTPPで各国と締結した条件と同じ水準を維持できるのか、米国がチラつかせていた自動車の追加関税を回避できるのかという2点だった。日米交渉で常に争点となる牛肉や豚肉については、基本的にTPPの水準で落ち着いたことから、この点に関して及第点だったことは間違いないだろう。

 一方、自動車の追加関税については、見解が分かれている。

 牛肉や豚肉などの農産品は、自由化が進めば国内の農業に大きな影響を及ぼすことになるが、これらの産品は以前から自由化交渉が進められており、農業関係者もある程度は、覚悟を決めてきた。消費者にとっては、安く食品を買えるので、むしろ自由化を歓迎する声もある。

 しかし自動車は、日本経済の屋台骨であり、自動車産業が打撃を受けると、日本経済は総崩れになってしまう。自動車メーカーのほとんどは、販売の多くを北米市場に依存しており、米国に追加関税を実施されると、日本にとっては万事休すとなる。こうした事情もあり、今回の日米交渉では自動車の追加関税回避が最優先された。

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