高い処理能力を持ったリソースを、ユーザーが必要なときにだけ提供する「クラウドHPC」。主要クラウドベンダーが注力し始めたクラウドHPCのメリットと、普及における課題について説明する。
クラウドベンダーは常に、市場でシェアを拡大する方法を模索している。こうした取り組みの一つが高性能計算(HPC:High Performance Computing)向けクラウドサービス(以下、クラウドHPC)の提供だ。
ユーザー企業はクラウドHPCを使って、流体力学計算や財務分析シミュレーションなどの複雑な数値計算を実行できる。自社でHPCのインフラを保有しようとすると、データセンター機器やその管理に多額の投資を必要とする。これらの要求を満たすために必要な社内の処理能力や、従業員のスキルセットを備えている企業は多くない。
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleの主要クラウドベンダー各社は、企業向けのクラウドHPCを提供している。
コンサルティング会社Pund-ITのアナリスト、チャールズ・キング氏によると、HPC向けのアプリケーションは一般的に、複雑な数値計算を実行するために、特別に設計されたサーバを必要とし、多くのリソースを消費する。
HPCの導入支援を手掛けるHyperion Researchでシニアリサーチバイスプレジデントを務めるスティーブ・コンウェイ氏は「クラウドHPCの登場によりHPC市場が拡大し、オンプレミスに必要なインフラを持たないユーザー企業もHPCを利用できるようになった」と述べる。クラウドHPCを利用することにより、データ分析や自動運転、精密医療、IoT(モノのインターネット)などの用途で、HPCアプリケーションを実行できるようになったとコンウェイ氏は説明する。
すでにオンプレミスにHPCインフラを所有している企業も、その一部をクラウドに移行してメリットを得ることができる。コンサルティング会社Moor Insights&StrategyでHPCおよびディープラーニングのコンサルタントを務めるカール・フロイント氏は「パブリッククラウドでアプリケーションを開発して、オンプレミスのデータセンターでそのアプリケーションを実行することもできる」と言う。
HPCのインフラを短期的に利用したいと考える企業は少なくない。例えば石油会社は半年に1回、掘削に最適な場所の探索のためにHPCのインフラが必要になることがある。クラウドを利用すれば、必要なときだけHPCのインフラを利用できる。
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