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「技術者は全員知っていた」「基地局整備は簡単じゃない」 ソフトバンク宮内社長、楽天の参入遅れにチクリ

» 2019年11月05日 21時43分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「ソフトバンクの技術者は5月くらいから全員知っていた」――。ソフトバンクの宮内謙社長は11月5日に開いた決算発表会で、10月にMNO事業に本格参入する予定だった楽天の基地局整備が遅れている件についてこう明かした。

 楽天は当初、2020年3月までに3432局を整備する計画を総務省に提出し、電波の割り当てを受けた。だが、用地交渉などが難航した影響で遅れが生じ、同省から19年3月、7月、8月に行政指導を受けた。10月からは5000人限定の無料サービスを試験運用する形にとどまっており、有料サービスの本格展開には至っていない。

photo ソフトバンクの宮内謙社長

 こうした楽天の状況について宮内社長は、「ネットワークを仮想化するといっても、最終的には基地局がからんでくる。(基地局整備は)そんなに簡単にできるものじゃない。楽天さんは長い年月をかけて頑張らないといけない」と指摘。

 「ソフトバンクも、孫さん(孫正義会長)が『つながらない』と怒られ続け、7〜8年かけて基地局を整備した。タワーを建設したり、用地を交渉したり、サイトを建設したりする作業は、コストもかかる大変な作業だ。当社の技術者はみんなそう思っていた」と繰り返し語った。

 楽天のつまづきを巡っては、KDDIの高橋誠社長も1日に開いた決算会見で「10月1日に(設備が)そろうとは思っていなかった。『そうだろうな』と感じた」と、予想通りであった旨を明かしていた。

個人向け通信事業が好調

 ソフトバンクが11月5日に発表した2019年度上半期(4〜9月)の連結決算は、売上高が前年同期比6.0%増の2兆3731億円、営業利益が6.5%増の5520億円、最終利益が4.1%増の3274億円と増収増益だった。個人向け通信事業などコンシューマ事業が好調だった。

photo ソフトバンクの2019年度上半期(4〜9月)の連結決算

 コンシューマ事業の売上高は3.6%増の1兆3360億円、営業利益は4.7%増の4016億円。楽天との価格競争が起こる恐れがあった中、「SoftBank」ブランドの他、格安SIMブランド「Y!mobile」「LINEモバイル」のユーザー数が堅調に推移した。

 SoftBankブランド向け大容量プラン「ウルトラギガモンスター+」や、家庭用ブロードバンドサービス「SoftBank 光」も好調で、通信料金と端末代金を切り離した「分離プラン」導入によるスマートフォン販売台数の落ち込みをカバーした。

 法人向け通信事業など「法人事業」も好調で、売上高は4.1%増の3141億円、営業利益は7.6%増の546億円に伸びた。法人向けスマホの契約数の売上増が成長に貢献した。

 個人・法人を合わせた3ブランド合計でのスマホ契約数は9%増の2303万件に伸びた。

「PayPayはスーパーアプリに進化する」

 6月に連結子会社化したZホールディングス(ヤフーから社名変更)の連結業績は、売上高が4.1%増の4841億円、営業利益が9.0%減の756億円。「Yahoo!ショッピング」などのコマース事業での取扱高が成長した他、かつて対立していた子会社アスクルの業績が成長したため増収となったが、同事業で行ったポイント還元などの販売促進策が利益を圧迫した。

 宮内社長は、Zホールディングスが手掛けるスマホ決済サービス「PayPay」の累計ユーザー数が11月時点で1900万人に達したことを公表。新たに始めたECサイト「PayPayモール」「PayPayフリマ」とのシナジーが見込めることにも触れ、「PayPayはスーパーアプリに進化する」と強調した。

 19年度の通期業績予想は、売上高が3.1%増の4兆8000億円、営業利益が8.8%増の8900億円、最終利益が3.8%増の4800億円のまま据え置いた。

photo 「PayPayはスーパーアプリに進化する」という

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