“船のデータ活用”が熱い 「海事データサイエンティスト」育成が盛り上がるワケ海を越えて活動が拡大

エンジンの保全、燃料費やCO2排出量コントロールなど、船舶向けのデータ活用が勢いを増しているという。文字通り海を越えたデータの標準化から、現場のニーズに特化した「海事データサイエンティスト」育成まで、熱い活動はどこへ向かっているのか。

» 2019年10月31日 12時00分 公開
[阿久津良和ITmedia]

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 「船舶業界においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している」――日本海事協会(ClassNK)の森谷明氏は、船舶向けIoTデータ共有基盤「IoS-OP(Internet of Ships Open Plantform)」を紹介する中で、このように切り出した。IoS-OPは、データサイエンティスト協会の「データサイエンスアワード2018」で最優秀賞を受賞した取り組みだ。

 ClassNKは船舶の検査機関である国際船級協会の一つだ。森谷氏は現在、船舶IoTのデータ共有機関であるシップデータセンターに出向して、データ共有事業の企画や海事データサイエンティスト育成などに注力する。

日本海事協会 シップデータセンター出向 企画・営業部長 森谷明氏

 「船舶運営」とは普段聞きなれない言葉だが、何を指すのか。例えば、食料や自動車、原油などの物流を支える巨大なコンテナ船や大型タンカーは、物資や燃料、食料を積み込むと、目的地までときには数週間に及ぶ長い航海に出る。その間は、船員たちが交代で24時間365日、操舵から積み荷の管理、エンジンや計器などの管理を担う。

 森谷氏はその膨大な作業を「たとえて言うなら、船舶運営は、東京タワーを超える400メートル級の鉄塊を、23人程度のスタッフで24時間365日運営するようなもの」と語る。

 そんな船舶運営の技術には、着々と変化が起こっている。例えば、それまで重油が一般的だった燃料を、CO2排出問題を踏まえてガスに切り替え始めた。また、アナログだった計器も、デジタルに変わりつつあるという。そんな中、新たに注目を集めているのがデータだ。

 「それまで個々の技能が優先されていた船舶の現場でも、一般企業と同様にデータ活用の需要と課題が明確になってきた」と森谷氏は語る。

 一体どういうことなのか。森谷氏によれば、例えば造船所は建造した船舶の運用データを活用できる。船舶に載せるエンジンやプロペラといった機械を生産する「舶用工業」と呼ばれる分野では、人材育成や技術向上にデータを活用したいという声があるという。また、船舶を運航する際のセキュリティにデータを活用する余地もある。

 これらのニーズを背景に、船舶業界でデータサイエンティストの需要が高まったため、森谷氏らはIoS-OPの推進に長く取り組んできた。

複数の製造企業と提携して目指す、未来の船舶データプラットフォーム

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