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ヤマハがモーターショーに“謎の四輪駆動車”出展 その正体とは?東京モーターショー2019

» 2019年10月23日 14時41分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 「月面探査ローバのようだ」「パッと見た感じ、用途が謎だ」──「第46回東京モーターショー2019」の来場者が足を止め、そのようにつぶやきながら眺めるクルマが、ヤマハ発動機のブースに展示されている。そのクルマとは、周囲をセンシングしながら自律走行するという四輪駆動のコンセプトカー「Land Link Concept」だ。人が乗り込むわけではなく、重い荷物などを運ぶことを想定している。

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 Land Link Conceptは、周辺の映像から走路や障害物を判別するAIを搭載。胴体のカメラ4台で周囲を撮影し、走路と障害物を検知しながら自律走行するという。レーザーを用いたセンシング技術「LiDAR」(Light Detection And Ranging)は採用していない。

 同社の西村啓二さん(先端技術本部)は「LiDARは高価な上、ほこりなどの影響を受けやすく、屋外用途には向いていなかったり、一定期間使うとパーツ交換が必要になったりというデメリットがある。今回はカメラと画像認識技術に焦点を当て、低速・無人化の用途を試している」と説明する。

 現時点では実装していないが、実用化の段階では、GPSの位置情報や、取得した周囲のデータから自己位置の推定と地図作成を行う技術「SLAM」を活用し、スタート地点とゴール地点を定めた上で、その間の道を走行する──という使い方を考えている。

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 四方の車輪は自在に向きを変えられ、カニのように横移動したり、その場で旋回したりといった動きも可能。上から見ると正方形に近い車体だが、この形態は「ショー向け」(西村さん)だといい、幅が狭い環境では胴体を細長くしたり、四輪駆動にはせず後輪をコロにしたりと、カスタマイズも可能という。

 用途について、西村さんは「例えば、重たい作業用資材を、何度も往復して運ばないといけないという場面を想定している。農園では、果物を自動収穫するロボットなどと組み合わせ、農作業を自動化することも可能になるのではないか」と期待を寄せる。今後、開発と実証実験を進めながら、さまざまな用途を検討していく。

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“ロボットライダー”の開発経験も生かす

 ヤマハ発動機は、前回の東京モーターショーでは、二輪車を操縦する人型ロボット「MOTOBOT Ver.2」を出展。西村さんは、このロボットの開発にも携わっていた。今回のLand Link Conceptにも、MOTOBOTを開発したときの経験を生かしているという。

 「MOTOBOTでは(進むべき)前方の道路を認識しながらヘアピンカーブを曲がる、という仕組みの開発で苦労した。MOTOBOTは高速、Land Link Conceptは低速なので違う部分も多いが、共通している課題もある。研究・開発では連続性があると考えている」(西村さん)

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