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駅ナカで始まる「サブスク自販機」、狙いと勝算を仕掛け人に聞く 「反対意見が出て当然。それでこそ知ってもらえる」(1/3 ページ)

» 2019年09月30日 05時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 食品、アパレル、乗り物、ゲーム、音楽、動画――。多くの企業が相次いでサブスクリプションビジネスに参入し、商品・サービスを定額制で提供する流れが生まれている。人気の要因は、ユーザー側は買い切る場合よりも負担額が安くなる点、企業側は顧客を獲得できれば継続収入が見込める点などのメリットがあるためだ。

 だが、誰もが頻繁に利用するものの、これまでどの企業もサブスク化してこなかったビジネスがある。その1つが自動販売機だ。

 JR東日本グループの駅ナカに自販機を展開するJR東日本ウォータービジネス(JR東WB)はその“盲点”を突き、日本初となる自動販売機のサブスクサービス「everypass」を10月1日に始める。駅構内にある、同社の最新型自販機「イノベーション自販機」に専用のスマートフォンアプリをかざすとドリンクを1日1本受け取れるサービスだ。

photo サブスク自販機の“仕掛け人”である、JR東日本ウォータービジネスの東野裕太さん(=右)、藤江亨さん(=左)

 自販機はポイントサービスと相性がよく、従来は日本コカ・コーラの「Coke ON」やキリンビバレッジとLINEの「Tappiness」のように、ドリンクを1本買うとポイントがもらえ、一定数たまるともう1本もらえる――という仕組みが一般的。JR東WBも同様のポイントサービスを提供していたが、定額制で自販機を継続利用できるサービスは行っていなかった。

 こうした中で、JR東WBがサブスク自販機を8月に発表すると、「自販機はその場でお金を払って使うもの」という先入観を覆されたからか、ネット上では「面白い」「申し込んでみた」という声から「メリットが分からない」と批判する声まで、多様な意見が殺到した。

定員500人に9000人が応募も「反対意見はあって当然」

 JR東WBはサブスク自販機を小規模で始め、利用状況を踏まえて拡大する方針で、当初は抽選に当たった500人に利用を限定している。だが消費者からの反響は大きく、発表後は定員の約18倍に当たる9000人超から応募があったという。

 「ネット上でいろんな声があることは知っていますが、反対意見はあって当然。賛否両論があってこそ、より多くの人に認知されると考えています。結果的に想定を大きく上回る応募がありましたが、それだけ多くのニーズがあったのではないでしょうか」――。サブスク自販機を企画した、JR東WBの東野裕太さん(イノベーション自販機サービス開発プロジェクトチームリーダー)はこう話す。

 東野さんは、サブスク自販機を始める狙いについて「収益を得るためではなく、新しい仕掛けによって当社の飲料ブランド『acure』の認知度を高め、ファンを増やすことです」と説明。「サブスク自販機単体で売り上げを大きく伸ばすことは難しいかもしれませんが、駅ナカの魅力を高めてファンを増やすことに関しての勝算はあります」と自信を見せる。

なぜサブスクを選んだのか? 意外な理由とは

 東野さんによると、サブスク自販機のターゲット層は「いつもJR東の駅を使っている人」。「ファンを増やす」という目的の中でも、通勤や通学でJR東の路線を使っているものの、駅に設置してあるJR東WBの自販機でドリンクを買ったことがない乗客の獲得が一番の狙いという。

 「サブスク自販機をきっかけに、普段から路線を使う人にacureを知ってもらい、飲む習慣をつけてもらえると、JR東グループ全体にメリットが波及すると想定しています」と東野さんは語る。

 では、数ある手法の中から、JR東WBがサブスクを選んだのはなぜなのか。

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