「QLC」方式のNAND型フラッシュメモリはHDDの代わりになるのか?「QLC」の期待と課題【前編】

QLC方式のNAND型フラッシュメモリはデータを高密度で保持できる利点があるが、犠牲になる性能もある。それを理解する上で役立つのが、データを保持する仕組みを知ることだ。

2019年09月27日 05時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]
画像

 NAND型フラッシュメモリに格納できるデータ量を増やすため、メモリベンダー各社は1つのメモリセル(データの記憶素子)に保存できるbit数を増やす技術を開発してきた。始めは1メモリセルに1bitだったものが2bitになり、やがて3bitになった。そして1メモリセルに4bitを格納する「クアッドレベルセル」(QLC)方式のNAND型フラッシュメモリが登場した。1メモリセルに3bitを格納する「トリプルレベルセル」(TLC)方式のNAND型フラッシュメモリと比べ、QLC方式はデータ保持の密度が約33%増加するため、コスト効率が上がる。

 デメリットもある。適したアプリケーションが限定されることだ。QLC方式のNAND型フラッシュメモリの採用を急ぐ前に、その制約を理解し、どのようなアプリケーションが適しているのか確認しておく必要がある。

 QLC方式のNAND型フラッシュメモリを搭載したフラッシュストレージは、データセンターで広く採用されているHDDの有力な代替策になる。

QLCの実力と中身

 Micron Technologyによると、同社が製造するQLC方式のNAND型フラッシュメモリの読み取りIOPS(1秒間に処理できるI/O数)は、一般的なHDDの450倍以上になるという。QLC方式のNAND型フラッシュメモリを搭載したフラッシュストレージは設置スペースを節約でき、電力消費量が少ない上、価格はHDDとほぼ同等だ。

 不揮発性メモリの一種であるNAND型フラッシュメモリは、複数のシリコンダイ(回路を作り込んだシリコンの薄辺)から構成されている。1枚のシリコンダイは複数の「プレーン」という領域に分かれ、各プレーンは複数の「ブロック」という領域に、各ブロックは複数の「ページ」という領域に、各ページは複数のメモリセルに分かれ、各メモリセルにデータを格納する。データの読み出しと書き込みはページ単位であるのに対し、データの消去はブロック単位であるため、書き込みと消去のプロセスは複雑になる。

 各ドライブが搭載する「メモリコントローラー」がデータの読み書きを制御する。例えば、データの書き換えを複数のメモリセルに均等に分散させる「ウェアレベリング」、空きブロックを作り出す「ガベージコレクション」に加え、誤り訂正、データ暗号化といったタスクをメモリコントローラーが制御する。ウェアレベリングとガベージコレクションは、書き込みと消去のプロセスの影響を緩和し、フラッシュメモリの耐久性(寿命)を延ばす上で重要だ。

注意すべき「P/Eサイクル」課題

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 日立ヴァンタラ株式会社

生成AIのビジネス活用に向けて、基盤をオンプレミスに構築すべき理由

ビジネスの現場における生成AI需要の高まりに伴い、AIデータセンター市場も活性化している。生成AI基盤をクラウドに構築するケースとの比較を通じて、オンプレミスデータセンターを利用するメリットおよびその構築の勘所を解説する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

Intel沈没、“半導体の巨人”に何が起きているのか?

生成AIブームで盛り上がる半導体業界で、Intelの不振が目立っている。業績不振が続き、大規模な人員削減が進められている。同社に何が起きているのか。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

AI時代に高まるストレージの重要性――選ぶべきはSSDか? HDDか?

生成AIをはじめとしたAI技術の進化と活用拡大で、SSDやHDDといったストレージの重要性はますます高まっている。そんなAI時代のストレージには、SSD、HDDどちらを選べばよいのだろうか。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

最新インフラの導入/運用でAIプロジェクトを成功させるための勘所

企業がAIプロジェクトを進める際、その成功にはさまざまな要因が絡んでくる。インフラの導入/運用、予算や人材の配分、計画立案などだ。では、どうすればAIプロジェクトを破綻なく成功させることができるのか、その勘所とは。

製品資料 日本アイ・ビー・エム株式会社

「2025年の崖」の先へ、2027年のチェックポイントを通過するためのAI活用法とは

「2025年の崖」として不安視されたレガシーシステムや人材不足の問題は、2025年を迎えた今、解消に向かいつつあるという。その理由とともに、次のチェックポイントとなるだろう2027年に向けて取り組みたいAI活用のポイントを解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...