福利厚生のアウトソーシングサービスが、成長している。福利厚生分野の専門研究機関である労務研究所(東京都港区)の発行する『旬刊 福利厚生』の調査によると、同市場は、2016年度に契約団体が2万団体、契約者数が2000万人を初めて突破。17年、18年も堅調に推移している。同誌によると、中堅・中小企業で特にニーズが高まっているという。給与面では大企業に劣るが、福利厚生面の充実ぶりをアピールをすることで人手不足を解消する狙いがある。
就活ポータルサイト「キャリタス就活」を運営するディスコ(東京都文京区)の調査によると、内定を得た学生のうち、9割ほどが企業側からのフォローを求めている。「内定を得た企業への意思決定に必要だと思うフォロー」という項目では、「食事会などの懇親会」「現場社員との面談」などが並ぶ。しかし、こうしたフォローは既に多くの企業が行っている。また、人手不足の中、手厚い対応をすることは人事部門への負担ともなってしまう。
また、同調査では「就職先企業を選ぶ際に重視する点」も発表。「将来性がある」「給与・待遇が良い」に次いで、3位には「福利厚生が充実している」がランクイン。18年卒向けの調査では全体の26.8%が回答していたが。20年卒では30.7%へと増加。福利厚生に対する注目が高まり始めている。
こうした中で、JTBグループのJTBベネフィット(東京都江東区)が10月1日、採用内定者を対象とした「内定者えらべる倶楽部」を開始した。従来のえらべる倶楽部を契約している企業向けに提供される。宿泊施設の割引やスポーツクラブの入会金無料、eラーニングの無料受講といったサービスが受けられるという。
同社は福利厚生代行サービス「えらべる倶楽部」を展開。現在2148法人が契約し、会員数は469万人と、市場の中でも大きな存在感を見せている。担当者によると、大企業から中小企業まで満遍なく幅広い企業が利用しているとのこと。
同社では19年4月から、定年退職者向けに「えらべる倶楽部マイスター」というサービスを開始した。内定者えらべる倶楽部と合わせて、「内定者から現役、そして定年退職者まで福利厚生サービスを一気通貫で利用できるようにした」(担当者)。こうしたワンストップのサービスは企業から求める声も多かったという。
なお、内定者向けの福利厚生サービスは他社も展開している。リロクラブ(東京都新宿区)では、内定者向けサービス「内定者福利厚生倶楽部」を10年頃から展開。担当者によれば、毎年1.5倍ほどのペースで利用企業が増えているという。サービスは、人事担当者の意見などをヒアリングしながら毎年改善を加えている。なお、社員向けのサービス「福利厚生倶楽部」は19年4月現在、契約企業数1万800社、会員数は690万人を数えるという。
同サービスの特徴は「内定者通信」だ。内定者向けに、ビジネススキルなどの情報をまとめた冊子を送付している。内定者の自宅に送付することで親の目にも留まり、企業に対するイメージ向上などの効果も見込めるという。また、内定者へメッセージを送り、悩みなどを解消する「気にかけ機能」も人気だ。綿密にフォローすることで、「内定辞退」を防止することもできる。
担当者によると、最近の学生はスマートフォンやタブレットを主に使い、パソコンを使う人が少ない傾向にあるという。そこで、今年からはエクセルやパワーポイントといったオフィスソフトのeラーニングも提供している。
人手不足の激化で、「選ぶ」立場が企業で、「選ばれる」のが学生という構図も変容を見せ始めている。内定者向けの福利厚生サービスは、企業側の新たな武器となるだろうか。
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