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AIが人間を孤独から解放する? ゲームAI開発者が語る未来「人間中心の社会が変わっていく」(1/3 ページ)

» 2019年09月24日 12時27分 公開
[村上万純ITmedia]

 人間と同等の知能や外見を持つアンドロイドが実現したら、人間にどのような影響をもたらすのか。そんなテーマを描いた実験的な作品が、2018年に発売されて話題になったプレイステーション4向けソフト「Detroit: Become Human」(以下、Detroit)だ。アンドロイドと人間が共生する社会で、プレイヤーはアンドロイドの視点で人間たちと接し、物語を進めていく。

 Detroitファンを公言するスクウェア・エニックス リードAIリサーチャーの三宅陽一郎さんは、「AIの本を10冊読むより、Detroitを1回プレイするほうがAIについて理解できる」と主張する。作中のアンドロイドは「アンドロイドだから」という理由で人間たちから差別を受けたり、暴行されたりする。三宅さんに限らず、多くのプレイヤーが衝撃を受けたはずだ。

 Detroitは私たちに何を訴えようとしたのか。また、アンドロイドと人間が共生する未来では何が起きるのか。9月13日に日本科学未来館で開催されたトークイベントに、Detroitの脚本とディレクターを務めた仏Quantic Dreamのデヴィッド・ケイジCEO、三宅さん、筑波大学システム情報系の大澤博隆助教が登壇し、AIと人間の未来について議論した。

スクウェア・エニックス リードAIリサーチャーの三宅陽一郎さん(中央左)、仏Quantic Dreamのデヴィッド・ケイジCEO(中央右)、筑波大学システム情報系の大澤博隆助教(右)

「これはSFではなく、人間の歴史だ」

 まずは、Detroitのストーリーを見ていこう。

2038年、デトロイト...。人工知能やロボット工学が高度に発展を遂げた、アンドロイド産業の都。人間と同等の外見、知性を兼ね備え、様々な労働や作業を人間に代わって担うようになったアンドロイドは、社会にとって不可欠な存在となり、人類はかつてない豊かさを手にいれた。しかし、その一方で、職を奪われた人々による反アンドロイド感情が高まるなど、社会には新たな軋轢と緊張が生まれはじめる。 そんな中、奇妙な個体が発見される。「変異体」と名付けられたそのアンドロイドたちは、あたかも自らの意志を持つかのように行動しはじめたのだった。

日本科学未来館より

 SFではよく見られるテーマだが、Detroitは実写のようなグラフィックとプレイヤーの感情を大きく揺さぶる物語、膨大なシナリオ分岐を備えるシステムなどによって、世界中で話題になった。

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