日本のデジタルトランスフォーメーションを見ると、日本企業特有の“症状”が見られるという。本連載最終回となる本稿では、その3つの症状を明らかにし、それに対する“処方箋”について説明する。
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私が共同設立者として関わったDBIC(デジタルビジネス・イノベーションセンター)は2019年5月で設立から3年を迎えた。設立当初はちょうど第4次産業革命の話題が出始め、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータといったキーワードが語られ始めたころであった。DBICは、オープンイノベーションとデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目指して、日本の大手企業30社約と活動してきた。
最終回となる本稿では、この3年間のDBICの活動から見えてきた「日本の企業がDXにどのように立ち向かうべきか」を私なりに説明したいと思う。
特定非営利活動法人CeFIL 理事/デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)共同設立者
株式会社HIイニシアティブ 代表取締役
早稲田大学卒業後、全日空商事株式会社などを経てマネジメントコンサルタント会社のプロシードを設立。25年間代表取締役を務め、2016年にはデジタル技術を活用して社会課題の解決に寄与するデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立。その他PMI(米国プロジェクトマネジメント協会)日本支部やITサービスマネジメントフォーラムジャパンを設立し、「PMBOK」や「ITIL」を日本に紹介導入した。
まず、国内の大企業のDX推進にまつわる課題について説明したい。
DBICを設立した頃は、まだDXという言葉が今ほど浸透しておらず、AIやIoT、ビッグデータといったデジタルテクノロジーに関するキーワードが盛んに語られていた。「第4産業革命だ」と大手新聞紙が大きく記事にした時期である。
その後、シリコンバレーの「GAFA」(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字)の存在感が増し、「自動運転技術やAIが今の仕事の在り方を変える」「データは第二の石油である」といわれるようになった。多くの日本企業が“シリコンバレー詣で”を始め、その後シンガポールやイスラエル、欧州などに目を向けるようになった。
もちろん世界に目を向けた情報収集は必要であり、海外から学んだことを実行に移せば価値はあるが、日本企業の場合はほとんどが“物見遊山”で、「継続的に情報収集していこう」で終わるケースが多いように思う。
シリコンバレーには「デジタルネーチャー」の企業群が多いが、それらが日本企業の参考になると私は思っていない。DBICは、設立当初よりあえてシンガポールや欧州といった中堅国の大手企業の変化や進化に注目している。
また、2年ほど前から国内企業で「デジタル推進部」といった“出島的”な組織が企業内に新設されるケースが急激に増えた。日本の大手企業もやっと目覚め、直面する歴史的な変動に積極的に動き始めたかのように見えた後、世界のDXの動きとは異なる日本企業特有の“症状”が出始めた。私は、このままでは日本は危機的な状況に陥るだろうと感じた。
私が考えるDXにまつわる日本企業特有の症状は、以下の3つだ。
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