大日本印刷と丸善ジュンク堂書店は9月18日、共同でデジタルサイネージの実験を開始した。書棚にデジタル映像を投影し、お客の反応などを見ながら広告効果を検証していく。また、POSデータとの連携も行う。
デジタルサイネージの名前は「デジタルシェルフ」。大日本印刷は3月に米国の流通・小売大手「Kroger(クローガー)」社と提携を結んだ。クローガー社は自社店舗を中心にデジタルサイネージ「Enhanced Display for Grocery Environments Digital Shelves(以下:EDGE)」を展開している。EDGEでは価格表示の自動化や、POSデータと連携した情報の表示が可能。大日本印刷はスーパーや家電量販店などでEDGEを使った実験を行っており、今回のプロジェクトもその一環だ。
今回の実験では、ジュンク堂書店池袋本店に、書店向けにカスタマイズされたデジタルシェルフ2台を導入。2台ともお客の目に留まりやすい1階に設置した。プロジェクターを内部に搭載し、書籍にまつわる映像表現を行う。また、センサーも内蔵している。お客が棚の前で立ち止まる頻度や、書籍を手に取る回数などを分析し、これまで難しかったお客の行動を分析する狙いだ。
店舗のオペレーション改善にも期待がかかる。書店の特徴ともいえる販促用のPOPを電子化。手書きしたり、差し替えたりする手間が軽減される。「これまでは閉店後に行っていた」(担当者)とされる作業から店員を解放する。
デジタルシェルフ以外にも、レジカウンターや入口付近に大型のデジタルサイネージを導入。こちらでは書籍や雑誌の情報だけでなく、映画やイベントなど幅広い情報を発信していく。
これまでに実験しているスーパーや、ドラッグストアなどと違い、本は「消耗品」ではない。何か目的を持って来店する人ばかりではないため、こうしたデジタル化によって買われ方が変化するのかは未知数だ。担当者によれば「お客さまの行動を数値化することに大きな意義がある」とのこと。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によれば、2018年における紙の出版物の市場規模は1兆2921億円。14年連続のマイナスとなっている。一方で電子出版物は前年比11.9%増の2479億円。「電子化」の波が押し寄せる書籍の“防波堤”となるだろうか。
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