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部下を育てられない“日本のダメ上司”が必ず陥るワナ――元GE「リーダー育成専門家」が斬る世界基準の部下育成法とは?(1/4 ページ)

» 2019年09月17日 06時00分 公開
[田口力ITmedia]

編集部からのお知らせ:

 本記事は、GEの経営幹部育成プログラムなどを歴任した著者による『世界基準の「部下の育て方」 「モチベーション」から「エンゲージメント」へ』(著・田口力、KADOKAWA)の中から一部抜粋し、転載したものです。リーダー育成の専門家が分析した「部下を育てられない上司の陥りがちなワナ」をお読みください。


 部下育成を実践するに当たって、まず考えなくてはならないことは、部下について知る前に「自分を知る」ことです。

 多くのマネジャーは、自分のことはさておいて、部下に対してどのような育成法でアプローチしようか――などと考えてしまいがちです。世界基準のマネジャー研修やリーダーシップ研修では、「自分を知る」ためのセッションが必須であるのに対し、日本企業の研修ではこの視点が欠けているのです。

 部下に対する指導や育成は、大げさに聞こえるかもしれませんが、その部下の人生に影響を与える行為です。あるいは人生とまでは言わずとも、少なくともビジネス・キャリアに対しては大きな影響を与えます。

photo 部下育成において、日本の上司につい欠けがちな心構えとは?(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

“自分”すら知らない上司が他人を育てられるか?

 人の運動能力や言語能力、あるいは好奇心といった基本的な能力は、幼少期に原型が形成されます。同様に、ビジネス・パーソンとしての基本的な能力は、初期に巡り合った上司や先輩から大きな影響を受けるのです。

 その後、中堅社員、役職者と組織の階段を上るにつれ、自己変容という大きなブレークスルーを起こす必要がありますが、そのきっかけをつくるのも上司の役割です。

 このように部下に対して影響を及ぼす重要な立場にありながら、上司が“自分自身”について深く知ることがなかったとしたら、どのような結果が待ち受けているでしょうか。答えは火を見るより明らかです。

 では、上司として自分の何を知る必要があるのでしょうか。

 ここではまず、大まかに自分自身を捉えるために必要なことを述べておきたいと思います。それは、自分の「バイアス」について知るということです。バイアスとは、「偏り」という意味です。

 私たちはさまざまな経験をするうちに、人や物事に対する見方・考え方に「バイアス」がかかってしまいます。例えば男女の違い、人種、職業などに対する偏見は、脳の中にある無意識のバイアスが影響して形成されます。こうしたことは最近「アンコンシャス・バイアス」(無意識の偏見・思い込み)として注目されています。

 部下に対する評価をするときも、どのような客観的指標を用いてもバイアスの影響を少なからず受けてしまいます。

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