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データを暗号化したままディープラーニング NTTが「秘密計算」で新技術

» 2019年09月03日 17時34分 公開
[ITmedia]

 NTTは9月2日、データを暗号化したままディープラーニングの学習を行える新技術を開発したと発表した。暗号化したまま計算を行う技術は「秘密計算」と呼ばれる。今回、従来の秘密計算が苦手だった計算処理を高速かつ精度良く計算できるようにしたという。

秘密計算を導入するメリット

 通常、暗号化したデータを計算するには元データに復号する必要がある。しかし、復号すると情報漏えいのリスクが高まるため、プライバシーの問題などからデータを集めにくく活用しにくいという課題があった。新技術ではデータを暗号化したまま計算できるので、プライバシーを保護したままの状態でディープラーニングの学習や予測処理などを行える。データ提供者の抵抗感を軽減できるため、従来よりも多くの訓練データを集められる可能性があるとしている。

秘密計算がないディープラーニングシステム

 ディープラーニングでは、入力を0〜1の出力に変換する「ソフトマックス関数」や最適化処理の手法である「Adam」などを利用する。これらは割り算、指数、逆数、平方根などを組み合わせた処理を行うが、従来の秘密計算はこうした処理が苦手だった。新技術では、ソフトマックス関数を高速かつ精度良く計算できるようになり、Adamも利用できるいう。

 ディープラーニングには、元データを示す「入力層」と回答を示す「出力層」の間に、元データの特徴を抽出する「中間層」が複数ある。同社はソフトマックス関数やAdamを計算するため、入出力の組を並べた対応表を用意。入力と対応表を暗号化しつつ、入力に対応する出力が得られる秘匿写像と呼ばれる独自技術を開発したという。また、ソフトマックス関数やAdamを構成する割り算、指数、逆数、平方根それぞれについて専用の高速アルゴリズムを開発したとしている。

 同社によると、専用の高速アルゴリズムを用いたところ、6万件の手書き文字を判別するモデルの学習で、1エポック(訓練データ1回の学習)を5分強で実行できたという。

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