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ソニーの“着るエアコン”「レオンポケット」は即戦力になりそうだ体当たりッ!スマート家電事始め(1/2 ページ)

» 2019年08月28日 07時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 35度を超える猛暑日が続き、携帯扇風機(ハンディファン)が飛ぶように売れた2019年の夏。ソニーはインナーウェアに装着する冷温パック「REON POCKET」(レオンポケット)を発表した。外出時に役立つ「着るエアコン」はどれほどの効果があるのか。プロジェクトリーダーの伊藤陽一氏、ハードウェア設計を担当した伊藤健二氏に話を聞きながら、実際に試した。

レオンポケットを担当しているソニーの伊藤陽一氏(写真=左)、伊藤健二氏(写真=右)に話を聞いた

 レオンポケットというネーミングは、「冷温」(れいおん)に由来する。大きさはPCのマウスぐらいで、重さは約85グラム。東レインターナショナルと共同開発した専用のインナーウェア(Tシャツ)は背中の首に近い場所にポケットを備え、ここに本体を入れて固定する仕組みになっている。

インナーウェアと一緒に身に着けて身体を冷やす/温めるウェアラブルデバイス「REON POCKET」(レオンポケット)

 首もとに装着する理由は、ここを温めたり、冷やしたりすることで、効率良く体に熱を伝えたり、体の熱を排出したりできるから。この上にワイシャツやジャケットを着ると、周囲からはレオンポケットを身に着けていることが分かりにくい。伊藤陽一氏は「見た目にも違和感がないようにデザインは徹底的に作り込みました」と話している。

東レインターナショナルと共同開発したインナーウェア。背中の首もとに設けたポケットにデバイスを装着する。サイズはS、M、Lの3種類、カラバリもホワイトとベージュがあるが、残念ながら現時点で発表されているのはメンズサイズのみ

 レオンポケットには電圧をかけることにより発熱/吸熱(冷却)するペルチェ素子という電子部品が使われている。ペルチェ素子はワインセラーなど小型冷蔵家電や自動車のシートクーラーなどに使われる実績のある電子部品で、駆動時の騒音が少ないことが特長だ。

背面のタッチパッドのように見えるところに発熱/吸熱するペルチェ素子を内蔵している。表面はシリコンパッドで覆われている
ペルチェ素子のモジュール。電圧をかけると発熱/吸熱する

 ただし、吸熱すると部品の反対側が発熱するため、これを上手に排出する技術が求められる。ハードウェアを設計した伊藤健二氏は、「ソニーではデジタルカメラやスマートフォンの商品開発を通じて、熱設計に対して多くのノウハウを培ってきました。今回それをレオンポケットにも生かしています」と話していた。そこにペルチェ素子の検証によって得たノウハウも含まれているのだろう。

 肌に触れて局所冷温を行うウェアラブルデバイスのため、安全性も気になるところ。「温めるときは低温やけどにならないよう、数百回のシミュレーションを重ねて検討してきました。一方、冷やすウェアラブルデバイスには前例がないため、医師の方々からたくさんの知見をお借りして、同時に私たちも多くの論文を調べながら冷やし過ぎない温度を目指しました」。

 本体には複数のセンサーを搭載し、常時デバイスの温度を感知。冷温制御はソフトウェアで行っているが、「万が一、ソフトがダウンした場合でもハードウェア的に電源を強制シャットダウンして安全を確保します」(伊藤陽一氏)としている。

画面は開発中のもの。Android/iOS対応の専用モバイルアプリで好みの温度設定ができる

 レオンポケット専用のモバイルアプリを使うと、スマホから本体の遠隔操作や動作状態のモニタリングができる。ユーザーが自身で温度を調整する「マニュアルモード」と、内蔵センサーがユーザーの体温や行動を感知し、自動で温度を合わせる「オートモード」がある。ほかにもペルチェ素子の放熱を制御するために載せているファンを扇風機の代わりに使う送風機能も搭載を予定している。

専用アプリで温度調整が行えるマニュアルモード。「温度を何段階で設定できるようにするのが最も使いやすいのか、検証を進めながら決めたい」と伊藤陽一氏は話していた

 なお、これはレオンポケットの「スタンダードモデル」に搭載を予定する機能で、価格を抑えた「ライトモデル」にはマニュアルモードのみ。購入時に注意したい。

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