Appleが、iTunes StoreやApple Musicにおける音楽コンテンツの音質向上施策を打ち出してきた。レーベルやアグリゲーター向けに「Apple Digital Masters」と名付けられた、マスタリングスキームの提供を開始している。
Apple Digital Mastersのワークフローとプロトコルに従って作成された圧縮音源(256KbpsのAACフォーマット)であれば、Apple Musicのストリーミング音源とiTunes Storeのダウンロード音源を「可能な限りマスター品質に近い形で配信が可能」(Apple Digital Mastersのホワイトペーパーより意訳)だというのだ。
と、ここまで書いておいて、いきなりちゃぶ台をひっくり返すようで申し訳ないのだが、Apple Digital Mastersに相当する高音質のAAC音源はすでに2012年から「Mastered for iTunes」の名称で登場している。実のところ、今回、Apple Digital Mastersに看板のすげ替えを行っただけなのだ。これまでは、iTunes Storeの対応済み音源のアルバムページに記載されていた「Mastered for iTunes」のロゴが、現在は全て「Apple Digital Masters」に置き換わっている。
ただし、Apple Digital Mastersのワークフローを実現するツール(Appleが無料で提供)は、「Mastered for iTunesの登場当時よりよくなっている」(マスタリングエンジニア)そうなので、単なる「看板の挿げ替え」以上の音質向上効果があるという見方もある。
では、Apple Digital Masters(Mastered for iTunesも考え方は同じ)によって作成されてAAC音源は、どのような仕組みで音質の向上が図られているのだろうか。その過程を簡略化すると以下のようになる。
マスター用の音源(16, 24bit/44.1〜192KHz)
↓
CDマスター用のWAVファイル(16bit/44.1KHz)、またはCDDAメディアを作成
↓
専用ツール「iTunes Producer」で上記WAVファイル(またはCDDA)をロスレスオーディオファイルに変換してAppleのサーバに送信
マスター用のハイレゾ音源(24bit/48〜96KHz)
↓
Apple Digital Masters専用ツールでエンコード
↓
iTunes Store用のAAC(256Kbps)
Mastered for iTunesの登場以前は、CD用のマスター音源(16bit/44.1KHz)ファイルから配信用のAACをエンコーディングする場合がほとんどだった。アルバムによっては、WAVファイルからではなく、CDDAからリッピングすることもあった。Appleと配信契約を交わしたレーベルが使用するソフトウェア「iTunes Producer」は、WAVファイルとCDDAからのアップロードに対応している。
その一方で、Apple Digital Mastersは、16bit/44.1KHzというCD向けのフォーマットを経ることなく、マスター用のハイレゾ音源から直接配信用のAACファイルを作成する。これにより理論上の高音質化を実現しているわけだ。
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