信用失墜が企業の「死」――親密取引先の破綻で連鎖倒産した“建機レンタル業界の異端児”あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(7)(1/4 ページ)

» 2019年08月16日 05時00分 公開
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信用失墜が企業の「死」 親密取引先の破綻で連鎖倒産

 1900年に創業した国内最大級の企業情報データを持つ帝国データバンク――。最大手の信用調査会社である同社は、これまで数えきれないほどの企業の破綻劇を、第一線で目撃してきた。

 金融機関やゼネコン、大手企業の破綻劇は、マスコミで大々的に報じられる。実際、2018年に発覚した、スルガ銀行によるシェアハウスの販売、サブリース事業者・スマートデイズへの不正融資問題などは、記憶にとどめている読者も多いだろう。一方、どこにでもある「普通の会社」がいかに潰れていったのかを知る機会はほとんどない。8月6日に発売された『倒産の前兆 (SB新書)』では、こうした普通の会社の栄光と凋落(ちょうらく)のストーリー、そして読者が自身に引き付けて学べる「企業存続のための教訓」を紹介している。

 帝国データバンクは同書でこう述べた。「企業倒産の現場を分析し続けて、分かったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある」。

 もちろん、成功事例を知ることは重要だ。しかし、その方法は「ヒント」になりこそすれ、実践したとしても、他社と同様にうまくいくとは限らない。

 なぜなら、成功とは、決まった「一つの答え」は存在せず、いろいろな条件が複合的に組み合わさったものだからだ。一方で、他社の失敗は再現性の高いものである。なぜなら、経営とは一言で言い表すなら「人・モノ・カネ」の三要素のバランスを保つことであり、このうち一要素でも、何かしらの「綻(ほころ)び」が生じれば、倒産への道をたどることになる。

 そしてそれは、業種・職種を問わずあらゆる会社に普遍的に存在するような、些細(ささい)な出来事から生まれるものなのだ。実際、倒産劇の内幕を見ていくと、「なぜあの時、気付けなかったのか」と思うような、存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事」が必ず存在する。同書ではそうした「些細な出来事=前兆」にスポットを当てて、法則性を明らかにしている。

 本連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」では、『倒産の前兆』未収録の12のケースを取り上げ、「企業存続のための教訓」をお届けする。第7回目はトラックレンタル会社PROEARTH(第6回トラックレンタル業界の“異端児”が繰り広げた「違法すれすれの錬金術」――見せかけの急成長が招いた倒産事件)が倒産した後に「連鎖倒産」したビバックを取り上げたい。

――建設機械販売、レンタル ビバック

設立から13年で、年売上高192億円あまりに達するが、親密取引先だったPROEARTHの民事再生法適用申請によって多額の焦げ付きが明らかとなる。ただしビバック倒産の最大の要因は、それだけではない。PROEARTHととともに業界の異端児として急成長を遂げながら、最終的には倒産せざるを得なかった同社は、ある大きな「間違い」を犯していたのだ。

phot 建設機械レンタル会社の「連鎖倒産劇」とは?(写真:アイティメディア撮影)

「飛ぶ鳥を落とす勢い」に向けられた不信感

 ビバックは2004年5月に設立され、17年3月期の年売上高192億3900万円にも達した急成長企業だ。

 しかし、高速回転を旨とする経営で内部留保は薄く、純資産額はわずか3億3700万円(自己資本比率3.0%)。そこへ17年12月26日、親密取引先だったPROEARTHが民事再生法の適用を申請(のちに手続き廃止が決定)したことに連鎖し、ビバックの破綻も始まった。

 PROEARTHの負債は約151億8539万円にものぼり、ビバックのPROEARTHに対する焦げ付き額は8億1800万円にもなることが発覚する。その瞬間にビバックは実質的に債務超過に転落し、債権者が押し寄せることとなった。

 親密取引先の倒産によって債務超過に転換したという、典型的な連鎖倒産。なぜ両者は、ともに破綻の道を歩むことになったのか。

 ビバックもPROEARTHも、当初はユーザーから先払いを受けてメーカーに支払う、在庫リスクのない商売だったという。やがて銀行から融資を受けて建機を仕入れるようになり、さらにレンタル事業でリース物件を貸し出すようになった。

 しかしこの事業について、業界内では早くから疑念が生じていた。あるレンタル会社の社長は「こう言っては身も蓋もないが……少しでも安く買って、月々高く払わせて、最後に高く売って処分するのがこの商売。彼らがあまりに高く買い過ぎ、在庫を持ち過ぎていることにビックリした」と首をかしげる。

 なるべく物件在庫を抱えず、所有物件を効率的にユーザーに回す。サプライヤーからは極力、安く買い、ユーザー企業には極力、高く払ってもらって利ザヤを儲(もう)ける。最後には極力、高く売る。これがリース業の眼目であるにもかかわらず、同業者から見れば、ビバックもPROEARTHも明らかな在庫過多だったわけだ。

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