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メルカリは鹿島アントラーズをどう変える? 会見で小泉社長らが語ったこと(1/2 ページ)

» 2019年07月30日 21時32分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 メルカリは7月30日、Jリーグ・鹿島アントラーズの経営権を約16億円で取得すると発表した。運営企業「鹿島アントラーズ・エフ・シー」の発行済み株式の61.6%を、日本製鉄などから8月30日に取得する予定だ。メルカリは今後、同チームの育成部門を強化する他、ホームスタジアムの店舗にモバイル決済サービス「メルペイ」を導入してキャッシュレス化を進めるなど、競技とビジネスの両面から支援していく。

 鹿島アントラーズは茨城県の鹿行地域をホームとするJリーグ屈指の人気チームで、過去には元日本代表監督のジーコ氏、元日本代表の柳沢敦氏、小笠原満男氏らが所属していた。現在は元日本代表の内田篤人選手らが所属し、19年シーズンは7月30日時点でJ1の4位に付けている。

photo メルカリの小泉文明社長(=右)、日本製鉄の津加宏執行役員(=左)、鹿島アントラーズ・エフ・シーの庄野洋社長(=中央)

スタジアムにメルペイ導入、チケットのペーパーレス化など推進へ

 メルカリの小泉文明社長は、同日開いた会見で「アントラーズをさらに強い常勝軍団にし、グローバルでナンバーワンのチームにしたい。ビジネス面でも、スタジアムの飲食店やグッズ店へのメルペイ導入、観戦チケットのペーパーレス化、ECの強化、AR・VRを用いた遠隔地からの観戦サービスなど、できることは多くある。チームの哲学はそのままに、企業価値や収益基盤をもっと強化したい」と語った。

 メルカリは、2017年にアントラーズのスポンサーになった。支援を通じて「自社の顧客層の拡大やブランド力の向上、ビジネス機会の創出につながると判断」(小泉社長)し、経営権の取得を決めたという。同社のフリマアプリ「メルカリ」は20〜30代の女性ユーザーが多いため、サッカーチームの運営を通じて、男性や40代のユーザーを増やしたい考えだ。

 鹿島アントラーズのホームタウンである鹿行地域の観光資源などを生かした集客施策の立案なども手掛ける方針で、小泉社長は「地域の方々と協力し、(地域に根差した)マーケティングや広告活動を行いたい。スタジアムは、地域におけるデジタル活用のショーケースになるだろう」と語った。

報道陣からは「赤字なのに、なぜ」との指摘も

 メルカリは現在、国内でのフリマアプリ事業こそ黒字だが、米国での同事業への投資やメルペイ事業の宣伝費がかさみ、19年6月期(18年7月〜19年6月)の連結業績は最終損益が137億円の赤字になる見通しだ。経営資源を注力分野に再配置するため、メルカリのライブコマース機能「メルカリチャンネル」を廃止したり、シェアサイクル事業「メルチャリ」から事実上撤退したりと、不採算事業の見切りも進めている。

 こうした状況を踏まえ、会見では報道陣から「赤字が続いているのに、なぜアントラーズを子会社化したのか」「事業に見切りをつけるのが早い印象を受けるが、サッカー事業は問題ないのか」といった厳しい質問も出た。

 これに対し小泉社長は、「アプリとは異なり、スポーツチームの運営は結果が出るまでに時間がかかる。歴史あるアントラーズを恒常的に黒字にし、単体で収益を上げられる存在にしたい」「日本でのメルカリ事業はかなりの黒字で、会社としては大規模な資金調達も行ってきた。時価総額は約4500億円に達している。赤字という側面だけでなく、キャッシュフローなどを含めた全体をみてほしい」と強調した。

photo 鹿島アントラーズの公式Webサイト
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