Libraが投機対象にならない理由ビジネスパーソンのための入門Libra

» 2019年07月12日 07時30分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 Libraが発表された直後、ビットコインのような値上がりを期待して購入したいと思った人も多かったようだ。しかし、Libraを買うともうかるのか? ブロックチェーン大学校FLOCが主催した、ブロックチェーン技術の専門企業コンセンサス・ベイスの志茂博CEOの講演から。

ブロックチェーン大学校FLOC主催のセミナーで、Libraについて語ったコンセンサス・ベイスの志茂博CEO

 「Libraの一番の特徴は価格が法定通貨に対して安定していること。法定通貨と主要国短期国債を裏付けにする。比率はまだ決まっていないが、主要通貨のバスケット構成になっている。価格は多少上下するが、安定するだろう」

 志茂博CEOは、このように話す。つまり、Libraを買っても値上がりすることは基本的にないということだ。値下がりもなく、価格を安定することを目指しているからだ。

 ただし、Libraが連動するのは主要通貨などを組み合わせた通貨バスケットというものなので、例えば円価格だけが大きく下がったら、円に対するLibraの価格は上がる可能性はある。日本円の暴落に備えてLibraを保険的に持っておく意味がないわけではないが、その用途なら米ドルや金、もしかしたらビットコインのほうが向くかもしれない。

分配金を受け取れる、もう一つのLibra

 しかし話はこれで終わらない。実は、決済用途を目的としたLibraコインのほかに、LibraにはLIT(Libra Investment Token)というものがある。これはセキュリティトークン(ブロックチェーンに乗った有価証券)で、価値の裏付けとして協会参加企業が拠出した300億円〜1000億円を運用した利益を受け取れるものだ。

一般に使われるLibraコインのほかに、セキュリティトークンであるLIT(Libra Investment Token)も発行される(=FLOC主催志茂氏の講演資料より)

 Libraの配当関係について志茂氏は次のように説明した。

 「ユーザーが裏付け資産を払い込むとLibraコインが発行される。一方、投資家は、投資するとLITが発行される。LITはガバナンストークンとして機能するものだ。投資家は、LITを通じてネットワークの保守運用を行う。(裏付け資産の運用益から)運営費用に使ったあとの利益はLITホルダーへの配当に充てられる」

 ビットコインでは誰もがネットワークの運営に参加でき、マイニング報酬という形で収益を受け取る。一方Libraを動かすサーバ(バリデーションノードと呼ぶ)は、Libra協会が管理運営する。そこにかかる費用は、最初に協会参加者から集めた1社約10億円の運用益で賄われる。

運用益の分配の仕組み(=FLOC主催志茂氏の講演資料より)

 この運用益は「SDR金利を見ると1%前後。LITも1%前後になるのではないか」(志茂氏)と見られており、運営費用を払って余った利益がLITを持つユーザーに分配金として支払われる。SDRとは、IMFが作った国際準備資産に対する特別引出権。通貨バスケットと短期国債で運用されており、Libraに近いと想定される。

 ではどうやったらLITを得られるのか。残念ながら現在のところ、約10億円を支払ってLibra協会に参加するしかないようだ。また、NGOの場合支払いは免除されるようだが、2000万人以上のユーザーを持っていたり、業界上位企業と認定されることが必要。LITトークンの譲渡が禁止されているのかは定かではないが、協会のガバナンスを担う機能も持っているため、一般の人がLITを保有するのは難しそうだ。

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