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ヤフー、アスクルとの提携解消を拒否 アスクルは騒動の経緯を暴露 対立鮮明に(1/2 ページ)

» 2019年07月17日 19時21分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 ヤフーと、オフィス用品の通販事業を手掛ける子会社アスクルの対立が鮮明になっている。ヤフーがアスクルに対し、共同で運営するECサイト「LOHACO」の事業譲渡の打診や、岩田彰一郎社長への退陣要求などを行い、アスクルが反発しているためだ。アスクルは7月12日に、ヤフーに資本・業務提携の解消に向けた協議を申し入れたが、ヤフーは17日に「協議は不要」として拒否する考えを示した。

photo ヤフーとアスクルが手掛けるECサイト「LOHACO」

12年に資本・業務提携を締結

 アスクルとヤフーは、2012年4月に資本・業務提携を締結。同年10月にLOHACOをスタートした。15年にはヤフーによる出資比率(議決権ベース)を約45%に引き上げ、提携を強化していた。

 アスクルの19年5月期(18年5月21日〜19年5月20日)の連結業績は、純利益が前年同期比90.7%減となる4億3400万円に低下。LOHACO事業も14年5月期から赤字が続いており、19年5月期のセグメント損益は約92億円の赤字だった。主力のBtoB事業は伸びており、営業増益も果たしたが、ヤフーは業績不振を理由に、社長交代などを求めている。

 これに対しアスクルは、17日付で公開した文書で「上場企業としての独立性の侵害が顕著になった」「ガバナンスの観点からも看過しがたい、支配株主による強引な株主権の行使だ」などとヤフーを批判。これまで伏せていた、両社が対立に至った経緯を公開した。

photo ヤフーによる開示資料

19年1月にLOHACO譲渡を打診

 アスクルによると、ヤフーから19年1月15日に、LOHACOの譲渡の可否や、譲渡可能な場合の条件を検討するよう連絡があったという。アスクルはこれを受け、社外取締役・社外監査役からなる「独立役員会」と取締役会で、譲渡すべきか否かを議論。譲渡しないことを決め、2月26日にその旨を伝えた。ヤフーからは「誠実な検討に感謝する」との回答があったという。

 その後アスクルは、5月8日に次期取締役候補者について決議し、現任の取締役を全て再任する方針を固めた。ヤフーから派遣されている社外取締役にも伝えたが、異論はなかったという。

6月末にヤフー川邊社長がアスクル訪問、退陣を要求

 だが6月27日に、ヤフーの川邊健太郎社長と法務部長がアスクルを訪問し、岩田社長に退陣を要求した。岩田社長は7月1日に「自身の進退は、指名・報酬委員会の答申を踏まえ、取締役会で議論する」と返答。同委員会を3日に開き、5月に固めた「現任の取締役を全て再任する」との方針を継続することを決議した。

 前述の独立委員会は10日、こうした状況を懸念し、アスクル経営陣に「ヤフーがLOHACO事業の経営方針を一切明らかにしないまま、譲渡を検討するよう求め、それに応じない岩田社長の退陣を要求するのは不誠実」として、ヤフーとの資本・業務提携の継続を懸念する旨の文書を提出した。

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