京都大学が昨年末から今年にかけて、業務系システムのほとんどをクラウドへ移行した。人事給与、財務会計、教務情報などのシステムをAmazon Web Services(AWS)のIaaSに移した。同じくオンプレミスで運用していたグループウェア、教職員用のメールなど情報系システムも、サイボウズの「Garoon」「kintone」、Googleの「G Suite」といったクラウドサービスに切り替えた。
「プロジェクトのコアメンバーは6人と少なく、ベンダーにも迷惑を掛けた」――京都大学の永井靖浩教授(情報環境機構 IT企画室長)はそう話す。永井教授が6月12日、イベント「AWS Summit Tokyo 2019」で、大規模なクラウド移行の舞台裏や、そこで得た知見を語った。
京都大学はクラウドへの移行前、業務系システム、教職員グループウェア、教職員用メールのそれぞれで課題を抱えていた。
業務系システムは、BCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)の対策が万全とはいえない状況だった。京都大学は、大地震を引き起こす可能性がある「花折断層」が走っている他、近年は大雨が降ると下水処理が追い付かず、漏水や逆流が起こる――といったリスクを抱えている。永井教授は「このままでは危ないという意識があった」と話す。
教職員用グループウェアも“限界”を迎えていた。同大学は2005年以降、グループウェア「Notes/Domino」を使い続け、ユーザーの利便性を向上させようとカスタマイズを繰り返していた。その結果、新しい機能を追加しようとすると、運用コストや改修コストが膨らむ状態に。「より利便性が高いアプリケーションにリプレースすべき」という意見が出ていたという。
また、教職員用グループウェアへのログインには専用の認証システム(Tivoli Access Manager)を使っていたため、メールなど他サービスなどと同じ認証システム(Shibboleth)に一本化できないという課題もあった。グループウェアに合わせた認証を使わざるを得ない「ベンダーロックイン」の状態だった。
教職員用メールは「事実上動かなくなる」という事態が10年と14年の2回発生。ユーザーが増えた結果、メールのデータを保管するディスク装置のI/O(Input/Output)性能が低下したためという。永井教授は「(当時)可用性がないと怒られた」と振り返る。
そんな状況から「教員の中には、教職員用メールからGmailに内容を転送したり、Googleカレンダーを利用したりと(ルールに反して)好き勝手に使う人もいた」という。
クラウドへの移行プロジェクトが始まったのは17年ごろ。業務系システムのサーバのレンタル契約が2年後(19年1月末)に切れることを見据え、グループウェア、メールも含めて一気に進めることになった。
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