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NTTとNECが次世代無線技術で資本業務提携 「世界に出る最後のチャンスかもしれない」

» 2020年06月25日 22時45分 公開
[谷井将人ITmedia]

 日本電信電話(NTT)と日本電気(NEC)は6月25日、5G通信や光通信技術を活用した製品の共同開発や、グローバル展開に向け資本業務提携を結んだと発表した。

photo NECの新野隆社長(左)と、NTTのNTTの澤田純社長

 NTTはNECの株式約1300万株を約645億円で取得。NECは調達した資金を無線通信の共通規格「O-RAN」の普及や、NTTが掲げる「IOWN構想」の実現に向けた技術や通信デバイスの研究開発に投じる。

 O-RANは、現在商用ネットワークの普及が始まった5G通信や、さらなる高速化や低遅延化などを目指す「6G通信」などに用いる共通の通信仕様。今後はO-RAN準拠の5G基地局を開発し、グローバルで販売するという。NECの新野隆社長は「2030年までにはO-RANの世界でシェア20%くらいを取りたい」と話す。

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 新野社長によると、現在は通信キャリアが特定のベンダー1社の通信機器を一式導入する“垂直統合モデル”が主流という。現在のモデルではキャリアは特定のベンダーの機材しか導入できず、ベンダーも自社製品が採用されたキャリア以外に機材を売り込むことが難しい状況だった。

 O-RANによる共通化の促進は18年から世界的に始まっており、キャリアは将来的に複数のベンダーの機器を組み合わせて柔軟な通信システムを構築できるようになる。ベンダーは各キャリアへ自由に機材を売り込めるようになり、ベンダー間の競争が促進すると見込まれる。

 NECはこれまで日本を除く世界で最も普及しているとされる通信規格「GSM」の影響で海外展開が難しい状況が続いていたという。新野社長は会見で「共通規格の普及が(NECが)グローバルに出て行ける本当に最後のチャンスかもしれない」と語った。

 NTTが提唱するIOWN構想では、光通信技術などによってこれまで以上の高速大容量通信ができる通信基盤の構築を目指す。今回の提携で両社は、世界最高レベルの高速通信性能を持ちながらも低消費電力な海底ケーブルや宇宙通信技術などを開発することに合意した。

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 NTTの澤田純社長はNECとの提携について「通信キャリアとベンダーがそれぞれの強みを統合して製品やシステム開発をするのは初めてだと思う」と話す。NECの強みについては「海外でも通信機器はNECという国が多かった。海底ケーブルや光通信でも世界でトップになるような力を持っている」と期待を見せた。

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