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コロナ後の働き方? 「ジョブ型雇用」に潜む“コスト削減”の思惑河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)

» 2020年06月26日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 「ジョブ型に変わる」「ジョブ型の人事制度」「新卒もジョブ型」など、ここにきて毎日のように「ジョブ型雇用」という文字がメディアに踊るようになりました。

 コロナ禍で在宅勤務が広がり、時間にとらわれない働き方へのニーズが一段と強まっていることが理由とされています。おそらく今後は「働き方改革」(まだ、やっていたのかという感じですが……)という名の下、「ジョブ型雇用」を適用する法律が整備されることになるでしょう。

 しかし、結論から言うと、この議論は新しいようで新しくない。ただ単に、企業が雇用義務を放棄できる方向に向かっているにすぎません。

 そこで今回は「ジョブ型の未来」について、あれこれ考えます。

コロナ禍をきっかけに、時間ではなく職務を中心とした「ジョブ型」雇用が注目されているが……(写真:ロイター)

「高プロ」の導入企業が少ない理由

 高度プロフェッショナル制度、いわゆる「高プロ」という言葉を覚えてますか? 今から2年前、これまた新聞紙面に毎日のようにレギュラー出演していた“新しい雇用形態”です。

 高プロは「労働時間規制から除外し、働いた時間ではなく成果で評価」する制度です。

 議論の俎上に上がった当時、裁量労働制で働いている人の過労死が問題になっていました。IT企業で裁量労働制のもと働いていた男性会社員(当時28歳)が、くも膜下出血で過労死。亡くなる直前の2カ月間の残業時間は月平均87時間45分で、徹夜を含む連続36時間の勤務もあったとされています(みなし労働時間は1日8時間)。また、裁量労働制を適用するテレビ局の制作部門で、ドラマを担当していた男性プロデューサー(当時54歳)は心不全で過労死。亡くなる直近3カ月の残業時間は、月70〜130時間でした。

 そういったリアルが問題になっているにもかかわらず、政府は「問題ない」という認識を一向に変えず、安倍首相に至っては「労働者のニーズに答えるために、待ったなしの課題」と豪語し、法案は成立したのです。

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