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「接触確認アプリ」を「なんか信用できない」と思う人に「26のイエスとノー」で答える(1/4 ページ)

» 2020年06月19日 15時40分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 6月19日、日本でも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する「接触確認アプリ」(COVID-19 Contact Confirming Application、通称「COCOA」)が公開された(iPhone版リンクはこちら、Android版のリンクはこちら)。

photo iPhone版接触確認アプリ

 このアプリに関するAppleとGoogleの共同コメントを得られた。以下に紹介する。

日本の新たな生活様式の下でCOVID-19の拡大抑制を図るために、厚生労働省が提供開始した新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」 をAppleとGoogleは支援致します。同アプリは、AppleとGoogleのプライバシー保護技術を活用しており、利用するか否かは利用者が自由に選択でき、デバイスの位置情報を収集・使用することもありません。AppleとGoogleは今後も厚生労働省及び日本政府の取り組みを支援して参ります。

 公開されたばかりということもあり、その内容をちゃんと理解している人はまだ少ない状況だろう。そこで、公開情報をもとに、その特質や価値などを、シンプルに「イエス・ノー」を基本に答えていきたい。全体を見ると、このアプリの位置付けがよく見えてくるのではないだろうか?

そもそもどんなアプリ?

利用は強制ですか?

  • ノー。自主的な判断で利用します。

 日本の場合、アプリのインストールは「強制」ではない。他国では、海外からの入国者やCOVID-19の罹患が明確な人の位置を把握するためにアプリの利用を強制に近い形で進めている場合もあるが、このアプリはそういう性質のものではない。

メールアドレスや電話番号、名前・住所の登録は必要ですか?

  • ノー。一切不要です。

 後述するが、位置情報を含む個人のプライバシーに関わる情報は一切記録しないし、ネットワークにもアップロードしないので、いわゆる「ユーザー登録」はなく、アプリのインストールだけで終わる(ただし、自分がCOVID-19感染に関する検査で「陽性」と判断された場合には情報入力がある)。

photo プライバシーに関する記載

他の国、例えば中国や韓国で使われたアプリ、シンガポールで使われたアプリと同じものですか?

  • ノー。ただし、ドイツやイギリスなどが同様のアプリを導入しています。

 今回のアプリは、3月にシンガポールが導入した「TraceTogether」というアプリに着想を得て作られている。しかし、その後にAppleとGoogleが共同で開発・公開したフレームワークに基づき、より厳密なプライバシー保護を軸に開発されている。ドイツはすでに同じフレームワークによるアプリを公開済みで、イギリスも導入すると発表した。ただし、国によって方針は異なるため、アプリを使うといっても、そこで集める個人情報の考え方や機能は異なる。

国やスマホメーカーに自分の居場所・移動先を知られてしまうのでは?

  • ノー。個人情報は記録していないし、ネットワークにもアップロードされません。

 今回のアプリでは、「誰かと1m以内の距離を保ち、15分以上の時間が経過した」時に、相手の情報をスマホの中だけに記録する。その人が罹患しているか否かは問わない。

 その際には、「相手の名前や各種ID」「相手といた場所」「相手といた時間」などは記録されない。「ある識別子(人を見分けるために必要な、匿名性を保った情報)を持つ人と濃厚接触した」という情報のみが記録されている。後日、ネットワーク上にある「COVID-19陽性と登録した人の識別子」とスマホの中で照合することで、濃厚接触した可能性を通知する仕組みだ。

 個人情報はネットワークに出ていかないし、位置情報を含む個人の行動履歴も記録されていない。

photo 識別の仕組み

GoogleやAppleが作ってるんですか? 「Microsoft製」って報道もありましたよね?

  • どちらもノー。日本のエンジニアが中心になって作ったオープンソースのアプリをベースに、日本国内の企業である「パーソルプロセス&テクノロジー」が開発しました。

 今回のアプリの核になっている技術は、エンジニアたちがボランティアとして集まったオープンソースプロジェクト「COVID-19 Radar Japan」のものだ。さらに、GoogleとAppleのフレームワーク技術をもとに作られている。

 しかし、最終的には厚生労働省が日本国内のITベンダー「パーソルプロセス&テクノロジー」に開発と運営を委託して開発された。そこにMicrosoftも技術支援の形で参加している。

海外でも使えますか?

  • 今はノー。日本国内のみが対象です。

 アプリは「各国の保健衛生機関」が「1国1アプリ」の形で出すことになっており、日本では厚労省が作った「COCOA」がそれ。現状では国をまたいでの検出や通知にはフレームワークも対応していない。

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