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次期iPhone、Lightningの代わりに「Smart Connector」説が再浮上した理由

» 2020年06月20日 07時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 6月22日(米国時間)に開幕する米Appleの開発者会議「WWDC」を前に、Arm搭載Macや次世代iPhoneのうわさがネット上を飛び交っています。中でも息の長いものが、次世代iPhoneでLightningを廃止するのではないか、というもの。その代わりに「Smart Connector」を採用すると予想する人もいます。筆者もその一人です。

Lightning端子。現在は主にデータ伝送と充電のために使われています

 iPhoneからLightningがなくなると、多くの不便が発生します。例えば有線イヤフォンを使い続けている人には大きな問題でしょう。Appleの「AirPods」シリーズはとても完成度の高いワイヤレスイヤフォンですが、Bluetooth接続では音声信号伝送に必ず遅延(レイテンシ)が発生します。モバイルゲーミングの音声遅延はプレイの快適さが損なわれるだけでなく、スコアにも悪影響を及ぼします。

iPad ProのSmart Connector。専用キーボードへの給電や専用キーボード経由でiPadに給電する際に使われます

実は機能を拡張していたSmart Connector

 Smart Connectorは、2015年発売の「iPad Pro」に「Smart Keyboard」を接続するために作られたマグネット付きの端子。詳細な仕様は明らかにされていませんが、丸い3つの接点を持ち、iPad Proからキーボードを給電しつつ、タイピングの信号データをiPadに伝えるインタフェースとして機能します。当時もiPhoneへの採用を予想する人はいましたが、給電がiPad Proからキーボードへの一方通行だったため、そうした声は次第に小さくなりました。

 ところが2020年に発売された新しいiPad Pro専用キーボード「Magic Keyboard」では、キーボードを介してiPad Proに充電もできるようになりました。Smart Connectorの用途に広がりが見えてきたことから、Lightningに代わるインタフェース候補として再浮上したというわけです。

 仮にAppleがSmart Connectorの機能を拡張し、より大容量の映像/音声信号を扱えるようにすれば、現在Lightningに接続しているイヤフォンアダプターなどの外部アクセサリーをSmart Connector経由で使えるかもしれません。またiPhone自体に穴をあけないSmart Connectorは防水などの面でも有利。iPhoneの見た目もすっきりします。

 ただ、Smart Connectorには穴がないため、Lightningのようにケーブルを固定できません。仮にiPhoneにSmart Connectorが採用されるなら、Dockユニットのようなものが必要でしょう。筆者はそれがAppleの「Smart Battery Case」のような形で、Smart Connector周辺をまるごと覆うのではないかと考えています。

Appleの「Smart Battery Case」。純正です

 見た目があまりスマートではないためか、Smart Battery Caseを「Apple純正」と紹介しても疑う人が時々いるのですが、アップルは何世代ものiPhoneでこのケースを継続的に提供してきました。仮に拡張されたSmart Connector経由で接続するSmart Battery Caseが出てくれば、煩雑だったケースの着脱は簡単になり、ケースにはアナログイヤフォン端子や充電用コネクター、現在のiPhone 11用Smart Battery Caseに搭載されているカメラのシャッターなども追加できるかもしれません。iPhone自体のワイヤレス化という流れは止めず、有線イヤフォンやケーブル経由の充電を求めるユーザーに選択肢を提示できるのがポイントです。

 一方、Bluetoothの遅延を限りなくゼロに近づけ、ワイヤレスイヤフォンのデメリットをなくしていくアプローチもあるでしょう。ライバルの米Googleは、次期「Android 11」で、ゲームアプリに対して低遅延のデコードを可能にする技術拡張の採用を予定しています。Appleが同様の技術を開発していても全く不思議はありません。今年のWWDCで何か発表があるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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