多くの人に「感謝」されているのに、なぜ医者の給与は下がるのかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2020年06月02日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

 全国で医療従事者のみなさんへの「ありがとう」がさまざまな形で伝えられている。

 5月29日、航空自衛隊のブルーインパルスが都心上空を白いスモークを描いた。また、英国で危険にさらされる医療従事者へエールを送るために始まった「ブルーライトアップ」が日本各地でも広まっており、東京スカイツリーや京都の二条城など各地のランドマークが青く照らされている。

 そんな善意の広がりを見て、あらためて「絆」の大切さを感じた方も多いことだろうが、一方で「医療従事者のみなさん、ありがとう!」といくら喉を枯らしても解決できない構造的な問題が、今回あらためて浮かび上がっていることも忘れてはいけない。

 それは、「実は日本で一番ブラックな業界は医療」という問題である。

日本の医療界はブラックなのか(写真提供:ゲッティイメージズ)

 ご存じのように、日本各地の病院でクラスターが発生したことで、不眠不休で働かなければいけない医療従事者が多数出ている。陽性になった人々が自宅待機を命じられたり、離職をしたりということが相次いだため、残された人々への負担が急増。家に帰ることも許されず、クルマの中で寝泊りをして働く人もいらっしゃる。

 そこに加えて、そのへんのブラック企業よりもさらにハードなのが、地域住民から差別や誹謗中傷が寄せられることだ。今でこそ感謝だ、リスペクトだ、という美談ばかりにフォーカスがあたるが、陽性患者が出た施設で働いている医療従事者は、近所の人々から「コロナをバラまくな」などと文句を言われるケースが少なくない。また、彼らの子どもは保育園や学校から受け入れを拒否されるという問題も続発した。

 では、過酷な労働を強いられたうえメンタルまで痛めつけられた彼らが、せめてその苦労が報われるだけの「対価」を得ているのかというと、残念ながらそうとも言い難い。全国の病院で、医療従事者の給料やボーナスがカットされる事態が続発しているのだ。

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