Zoomで“遠くから”葬儀に参列 名古屋の葬儀社がオンラインのサービス開始3密を気にせずお別れを

» 2020年04月09日 12時00分 公開
[ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、密閉・密集・密接の“3密”を避ける行動が求められている。そんな中、悩みの種となっているのがお葬式だ。自粛できるものではないが、感染拡大のリスクも考慮しなくてはならない。

 厳しい状況の中、多くの人に安全な環境でお葬式に参列してもらおうと、名古屋の葬儀社が新しいサービスを始めた。西田葬儀社(名古屋市昭和区)は4月7日、Web会議用ツール「Zoom」を活用した新サービス「ネット遥拝(ようはい)遠隔参列システム」を開始したと発表した。

葬儀の様子を撮影して生配信する(プレスリリースより)

 このサービスでは、式場の後方から「iPad」で葬儀の様子を撮影し、Zoomを使って生配信する。利用者は、時間になったら訃報に添付されているURLにアクセスし、リアルタイムで通夜葬儀、お別れの時間の生配信を見ることができる。

 「多くの人が小さな空間に集うお葬式は、一つ間違えばクラスター感染となりかねません。またコロナウイルスの影響で、参列したくてもできない方々も多くいます。それらをまとめて解決する方法こそ、この“ネット遥拝”です」(西田葬儀社)

 「遥拝」とは、遠くにいる神仏やご先祖様の方向を向いて拝する行為。「その場に行くことが叶わなかった人による強い信仰心や想いを伴った行為」(同社)で、日本で昔から行われていたという。

ネットで遠くから葬儀の様子を見られる(プレスリリースより)

 今回のサービスは、昔ながらの遥拝の考え方と現代のインターネット技術を掛け合わせることで生まれた。Zoomを使ったのは、利用の手軽さと1000人まで同時参加ができることが理由。ネット遥拝を活用すれば、感染の危険を避けるだけでなく、遠方で参列できない人や家族葬だからと遠慮していた人も参列できる利点もある。また、式場内のスクリーンにZoomの画面を映すことで、式場からネット遥拝している人の姿を見ることもできるという。

 便利な技術を活用しながらも、故人をしのぶ昔ながらの考え方を大事にしている。感染症への対策にはさまざまな不便や課題が伴うが、亡くなった人を思う気持ちを尊重するために、便利なサービスを活用するのも一つの方法だろう。

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