クラウドサービス市場をリードするAWSのビジネスの最新状況が、AWSジャパンが開催したパートナー向けのイベントで明らかになった。その中から同社のビジネスの“深化”を探ってみたい。
Amazon Web Services(AWS)の日本法人であるアマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)が2020年3月25日にオンラインで開催したパートナー企業向けの年次イベント「AWS Partner Summit Tokyo」で、同社のビジネスの最新状況を明らかにした。本稿ではその中から、同社のビジネスの“深化”を探ってみたい。
AWSが先頃発表した2019年度第4四半期(2019年10〜12月)決算から算出した年間売上高の予測値は、前年度比34%増の398億ドル(約4兆2000億円)。同イベントの基調講演でまずこの数字を紹介したAWSジャパンの渡邉宗行氏(パートナーアライアンス統括本部 執行役員)は、「AWSの成長の勢いは変わっていない」と強調した。
同社のサービスインフラは、グローバルで22リージョン、69のアベイラビリティゾーン(AZ)に拡大。東京リージョンには4つのAZがあり、2021年には世界で唯一のローカルリージョンである大阪が、顧客ニーズの高まりを受けて標準リージョンに格上げされる予定だ。
AWSが提供するサービスは主要なもので175を超える(図1)。国内の顧客数は「数十万社」(渡邉氏)だという。1年前の同イベントでは「10万社以上」(渡邉氏)だったが、表現が変わった。国内のAWSパートナーネットワーク(APN)参加企業は620社。その内訳はコンサルティングパートナーが285社、テクノロジーパートナーが335社だ。また、地域のパートナーが38都道府県まで広がり「あと9県で協業すれば全国をカバーできる」(同)としている。
AWSジャパンの2020年のパートナー戦略は「ソリューション」「インダストリー」「クラウドエンジニア育成」「クラウドコミュニティーの強化」「地域でのパートナー活躍の拡大」の5つの領域に注力していくことだ。
1つ目のソリューションでは、「マイグレーション」「エンタープライズワークロード」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の3つの領域にフォーカスしている。マイグレーションは、図2のようにプロセスを幾つかのフェーズに分け、AWSのサービスとパートナーのツールを組み合わせることによって、短時間で容易に実践できる支援策の整備に努めている。
エンタープライズワークロードは、以前から注力している「SAP」「Windows」「VMware」への対応をさらに拡充する。「SAP on AWS」を利用する企業は5000社を超え、「その半数以上がSAP HANAベースのソリューションを利用している」(渡邉氏)という。また、2020年1月14日にサポートが終了した「Windows Server 2008」上のアプリケーションを新しいWindows Serverへ移行するプログラムのパートナートレーニングを4月にスタートすることも明らかにした。
DXは、図3のようにクラウドマイグレーションからデジタルイノベーションへの展開を支援していく。そうしたDXを実現する手段として、ストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)を軸としたデータレイクの構築を推奨していく構えだ(図4)。
これについて渡邉氏は、「進化し続けるビジネスプロセスとデータを分離し、データレイクによってIoT(Internet of Things)などで収集した新しいデータだけでなく、既存の基幹データなども活用できるようにするのがDXのポイントだ」と説明した。
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